スロベニアと日本を繋ぐワインショップ

公開日: : 最終更新日:2019/03/10 スロベニア, 世界の架け橋, 架け橋ebookプロジェクト, 留学生, 相互理解, 電子書籍

日本の暮らしに息づく「ハレの日」と「ケの日」

軽井沢で、とてもユニークなクラフトビールを製造する、ヤッホーブルーイングというマイクロブルワリーがある。今ではコンビニやスーパーでも見るようになった、「よなよなエール」や「インドの青鬼」「水曜日のネコ」などを販売するブルワリーだ。

約15年前、まだクラフトビールという言葉がこんなにも世の中に広まるずっと以前に、僕は茨城県つくば市の、とあるスコティッシュパブでリアルエールというビールに出会った。それまでバーやパブでは、ピルスナータイプのドイツのビットブルガーや、ヴァイスビアのエルディンガー、アイルランドのギネスやキルケニーなどを好んで飲んでいたが、よなよなのリアルエールに出会って一気に虜になった。通常のビールよりも5〜8℃高い10〜13℃で管理され、サーブする時はハンドポンプを使って、井戸のように樽から組み上げる。カスケードのように幾重にも広がるきめ細かな泡に喉が鳴る。波紋が少しずつ落ち着いて、ホイップクリームのような泡の蓋が出来ると飲み頃だ。常温に近いそのビールは、すっと喉を通り抜けて腹に収まる。僕のクラフトビールへの開眼は、よなよなリアルエールによってもたらされた。

よなよなの里公式サイトより

そんなクラフトビールを世に出し続けるヤッホーブルーイングのラインナップに、「ハレの日仙人」というビールがある。バーレイワインというスタイルのビールで、その名の通り、ワインに近い高めのアルコール度数を持つ、上面発酵で造られたエールビール。人生の折り目、節目の席で飲むために造られた特別なビールだ。エイジングに6ヶ月から数年間という時間と手間をかけるている。

日本の伝統的生活の中に「ハレの日」がある。その語源は「晴れ」であり、「晴れの舞台」(=生涯に一度ほどの大事な場面)などの言い回しで使用される。「ハレの日」は、晴れ着を着たり、神聖な食べ物である餅や赤飯を食べたり、お酒を飲んで祝うなど、特別な日とされている。それに対して、日常的な普通の生活や状況を指す「ケの日」がある。ケ=褻と書き、日常生活を営むためのケのエネルギーが枯渇することを「ケガレ(褻・枯れ)」とし、禊や清めによりケガレを落とし、ハレの日を迎えるという習慣があったそうだ。

「ケの日」を彩る美味しいワイン

私たちの人生では決してハレの日ばかりではない。むしろ人生の8〜9割はケの日だろう。単調で繰り返しの日常があってこそ、特別な日が特別になる。前出の「ハレの日仙人」に対して、人生の大部分を占めるケの日に飲んでもらいたいという想いで、リーズナブルで美味しいワインを提供するショップがある。

お店の名前は「qenohi-wine shop」。普段(ケの日)に飲むワインを提案したいということから、その名を付けたという。東京都北区JR駒込駅から5〜6分歩くと、田端銀座商店街が見えてくる。魚屋やおでん屋などが並ぶ商店街の一角にオレンジの垂れ幕が一際目立つqenohi-wine shopがある。

金〜日の週末だけオープンする店舗は、客が3〜4人でいっぱいになる大きさ。地元の方に美味しくて普段使いのワインを提供したいということで、店舗販売のみをされている。また、店内にはテイスティングスペースがあり、店内で販売しているワインを試飲して購入することができる。僕が伺った時も、日中ではあったが、ご近所のご婦人が白ワインをテイスティングされていた。どうやらご常連だったようだ。商店街で買い物を終えたあと、夕暮れ時にワインを嗜むなんて最高な「ケの日」だと羨ましく眺めさせて頂いた。

qenohi-wine shopホームページより

店内の壁一面がワインラックになっており、イタリアやフランスなどのワインが並ぶ。価格は1,000円台から揃っている。その中に、恐らく皆さんあまり聞き覚えがないであろう、スロベニア産のワインが鎮座する。日本ではあまり知られていないが、スロベニアはワインの生産が盛んなのだ。イタリアとの国境近くに位置するブルダで、家族経営のぶどう生産者が1957年に設立した協同組合が元になっているワイナリーがあり、そこから直輸入しているのが、100%手づみによる収穫で丁寧に作られているQUERCUS (クエルカス)というワインだ。僕は白のスパークリングを頂いたが、とてもふくよかでフルーティーで美味しい。

去る2月27日に、『世界と日本の架け橋ブック TSUNAGU スロベニア×日本』をリリースした、スロベニア出身の留学生ニーナ・ハビャンさんの紹介で参加した、スロベニア文化の日を祝うイベントでqenohi-wine shopのオーナーである米澤氏とのご縁を頂いた。ケの日に飲むワイン、地元密着のお店というコンセプト、そしてスロベニアワインを置いているというところにとても興味を持った。そして実際に店舗にお邪魔して、その雰囲気と気さくにお話ししてくれるオーナーの義理のお母様のお人柄で、ますます惹かれた。

イタリア、フランス、チリ、南アフリカ、オーストラリアなど、様々な産地のワインが近所のスーパーやネットショップで買える昨今だが、いつもとちょっと違った国のワインを飲んでみようかな?と思ったら、是非qenohi-wine shopを訪れてみてほしい。もうすぐ桜が咲く季節。近所の店でおでんを買って、店先のベンチでスロベニアの美味しいワインとのマリアージュを楽しむのも一興かと。普段と違ったケの日が味わえるかもしれない。

 

qenohi-wine shop
http://qenohi.strikingly.com

ケの日のワインを傍らにこちらの電子書籍をどうぞ
https://www.amazon.co.jp/dp/B07P7Q1M8B

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