いよいよ動き出した電子化の波
電子出版堅調、紙は減少傾向
2019年7月25日、出版業界の調査研究機関である、公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所が、『出版月報』7月号にて2019年上半期(1~6月期累計)の出版市場の統計を発表した。2019年上半期の出版市場は、紙は前年同期比4.9%減の6,371億円、電子出版は22.0%増の1,372億円となり、紙と電子出版を合算した市場規模(推定販売金額)は、前年同期比1.1%減の7,743億円という結果だった。
内訳を見てみると、紙については書籍が4.8%減の3,626億円。雑誌は5.1%減の2,745億円。電子出版の内訳は、「電子コミック(電子コミック誌含む)」が27.9%増の1,133億円、「電子書籍(コミックを除く文字ものなど)」が8.5%増の166億円、「電子雑誌」が15.1%減の73億円。電子コミック誌についてはその概念自体が曖昧になっており、各社の売上高を集計しづらくなっているため、今年から「電子コミック」に移動し、2016年まで遡及して集計し直しなおしたとのこと。
この結果を見て、市場が電子出版にわずかにシフトし始めているものの、個人的にはまだまだ紙の方が需要が高いと考える。ただし、ジャンルによっては、確実に電子へと移行しており、出版各社も早急な対応が求められるだろう。特にコミックと雑誌は、その動きが顕著だ。コミックでは、既存サービスの他、新規参入したLINEマンガや、amazonが提供するKindle Direct Publishing(KDP)によるマンガ作成プラットフォームが、電子出版への動きを加速化させているだろう。マンガのコマ表示も、数年前より格段に見やすくなっており、コミックは今後ますます電子へとシフトすることが予想される。
迫り来るデジタルの波にいよいよ改革が必要か
また雑誌については、紙での出版は非常に厳しいものになってくのではないだろうか。バッグに入るサイズの雑誌も次々と出版されているが、電子雑誌、ECショップ、SNSの影響は避けられず、今後読者層が限られていくと考えられる。雑誌で言えば、個人的には電子雑誌もこのままのカタチだと縮小傾向に向かうと思っている。雑誌を購入目的として、トレンドや注目の製品やサービスがまとまって見られるということがあるだろう。また、読者モデルや口コミといった身近な存在による情報を見たいという思いもあるのではないだろうか。そういった目的は、いまやECショップとSNSで十分に果たされており、雑誌というカタチに固執する必要はなくなっている。だとするならば、電子雑誌から直接購入する仕組みや、雑誌とSNS系アプリを連携させたり、人工知能によるレコメンドを強化するといった取り組みも必要となるのではないだろうか。
時代は確実にデジタルコンテンツに向かっている。本も決して例外ではなく、間違いなく電子出版市場が紙市場を上回る時がくるはずだ。そこで求めらるのは、これまでの「出版社→取次→書店」というシステムではなく、読者を中心としたユーザビリティーの高い読書環境とアクションが求められる。出版業界のみならず、様々な業界からの参入により、市場が活性化されていくことを期待したい。僕たちもその一翼を担っていきたい。
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