中国出版市場から日本の未来が見える
デジタル大国中国
先日中国の出版事情に詳しい方からお話を聞くことができました。
ご存知の方も多いと思いますが、中国はもはやデジタル大国です。多くの人がスマートフォンを所有し、音楽や動画、電子書籍などのデジタルコンテンツを楽しみつつ、ライブコマースで物を買い、キャッシュレスで支払いを済ませているんですね。
CNNICの第43次中国互聯網絡発展状況統計報告(2019年2月)によると、2018年12月時点でインターネットユーザー数は8億2851万人。普及率では全人口の59.6%となる。そのほとんどがスマートフォンなどを利用したモバイルインターネットユーザーで、その数は8億1698万人、ネットユーザー全体の98.6%を占めています。
中国では、紙で本を読むよりも、電子書籍やオーディオブックで本を聴く人の割合が多いというデータが出ています。それだけ、デジタルコンテンツに馴染んでいるのがいまの中国なんですね。
日本の出版市場が落ち込む中、2019年の中国出版市場は1兆5,494億円という数字。これは前年対比で14.4%増とのこと。どんな本が売れているかというと、ジャンル別では、学参書、児童書、文学がトップ3だそうです。中国で日本の本は売れるのか?という質問をしてみたのですが、漫画をはじめ、小説や児童書はかなり人気があるとのこと。日本の出版社では、児童書を出版するポプラ社さんが中国で成功していますね。小説は圧倒的に東野圭吾さんの作品が人気。それと「窓際のトットちゃん」。
既刊本が売れ続ける中国
窓際のトットちゃんはご存知ですか?ご存知ない人もいるかもしれません。では、黒柳徹子さんは?知っている人がほとんどじゃないですか?そうです、窓際のトットちゃんは1981年に黒柳徹子さんが出版された作品なんです。黒柳さんの自伝的物語で、彼女自身が通った「トモエ学園」を舞台にしたノンフィクションです。戦後最大のベストセラーといわれていて、世界35ヶ国で翻訳されています。すごいですね。この「窓際のトットちゃん」が、中国ではロングセラーなんですね。中国は新刊が爆発的に売れるというよりは、既刊本がずっと読み継がれて、常に上位にランクインするようです。新しいもの好きな日本とはちょっと習慣が違いますね。
日本ですでに本を出版している人は、既刊本を電子化して中国語に翻訳したり、ナレーションをつけてオーディオブック化することで、莫大な数の新しい読者を獲得することができるかもしれませんね。
そんな中国では、新型コロナの影響もあり学校教育の現場ではオンライン授業がいち早くスタートして、山村部の子どもでもネットの繋がる山の麓まで降りてきて、授業を受けているそうです。日本はどうでしょうね?まだまだオンライン授業は進んでいないと言えますよね。学参書や児童書もオンラインで読めるようになっていれば、遠くの書店や図書館に行く必要もなく、ネット環境とスマホ(タブレット)を使って学ぶことができます。確かに紙の本は大事だし、読みやすいかもしれません。理解度も紙の方が深いといったデータもあります。ただ、時代の流れと環境の変化は待ったなしです。新しい読書環境をいち早く構築し、流れに乗った読者を待ち受けることが、今後の出版界において重要であるということを、中国が教えてくれている気がしますね。
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