現代文化のルーツを探る㊻ 花火

公開日: : 現代文化のルーツ

夏の風物詩と言えば花火ですね。
今年はコロナ禍の影響もあり、各地の花火大会が中止となってしまいました。
私の地元土浦市では、毎年10月に全国花火競技大会が開催されます。10月にはコロナ禍が終息して花火が見られるといいのですが。

さて、私たちが当たり前のように見ている花火大会ですが、一体いつ頃から誰が始めたものなのでしょうか?
そのルーツと歴史を見てみましょう。

花火のルーツは、1127年からの南宋時代に中国で発明されたとされています。
日本で最初に花火を見た人物については諸説あり、1人は天正17年(1589年)7月、伊達正宗が観賞したのが最初であるという説、それと、慶長18年(1613年)8月、徳川家康に英国人ジョン・セリーヌが、同行の中国人の手で花火を見せたという説です。

家康が江戸幕府を開き、戦がなくなったことで、仕事を失った鉄砲の火薬職人が世に溢れます。そこで、家康は花火作りを奨励し、仕事を失った鉄砲の火薬職人たちが、花火を作るようになっていきます。そうして各地で花火が広がり、特に江戸っ子の間で人気になりました。江戸のほかにも、花火が相当盛んであった地方は、三河・近畿・信州・越後・九州と言われています。

当初はねずみ花火や葦の先に火薬をつけた、おもちゃ花火が主流でした。万治2年(1659年)、大和の国(現・奈良県)から弥兵衛という男が江戸へ出てきました。火薬が扱えた弥兵衛が、葦の管の中に火薬を入れたおもちゃ花火を考案し売り出したところ、江戸庶民に爆発的な売れたといいます。弥兵衛の花火は、それまで売られていた線香花火やねずみ花火よりも大きな火が出るところが人気でした。その金をもとに、弥兵衛が両国横山町に出した店の屋号が「鍵屋」。打ち上げ花火の際の掛け声「たまやー、かぎやー」で知られる、あの鍵屋です。

弥兵衛はその後も大型花火の実験を重ね、より大きく、より高く上がる花火の開発を続けました。享保2年(1717年)には水神祭りの夜に献上花火の打ち上げにも成功し、これが後に始まる両国の川開き花火の先鞭となりました。

余談ですが、このおもちゃ花火で火事が多発したため、花火禁止令が出された時期もあったそうです。幕府は花火の種類や火薬の量、使用場所や製造業者を指定したりして、安全対策を指示したようです。当時の江戸では、防火対策として広小路をもうけたり、川の両岸に火除地をつくって、防火ベルトを設けていました。

江戸時代から庶民の楽しみとなった花火。花火大会として観賞されるようになったのもこの時代です。
八代将軍吉宗の時代、コレラが流行し亡くなった人の魂の供養と悪病を追い払うため、隅田川で行った「水神祭」ではじめて花火が打ち上げられました。花火大会といっても、今のような華やかなものではなく、狼煙のような花火だったといいます。
これは、現在でも7月最後の土曜日に行われている、東京隅田川の花火大会のルーツだとされています。

江戸初期の花火大会では、前出の「鍵屋」と「玉屋」という花火屋が花火を作っていて、2カ所から交互に花火を打ち上げていました。「たまやー」「かぎやー」の掛け声は、この2つの花火屋の良かった方の名前を呼んでいた習わしの名残なんですね。今では多くの人が「たまやー」と叫ぶのではないでしょうか?これは当時から玉屋の方が人気があったからなんですね。
その玉屋は、創業30年ほどで大火事を出してしまい、店は取り潰しになってしまいました。江戸で花火を作っていたのはほんのわずかな期間でしたが、
今も「たまやー」の掛け声が受け継がれているのは、玉屋の花火が素晴らしかったからでしょう。
東京の花火を見るときは、江戸風に「たまやー」「かぎやー」と掛け声をかけてみてはいかがでしょうか。

明治のはじめ頃には、西洋からの輸入により、塩素酸カリウムやストロンチウム、バリウムなどの彩色光剤を得て、日本花火の歴史上最大の躍進の時期を迎え、今日では世界一といわれる日本花火の基礎がつくられました。

今年は花火大会で美しく大きな花火を見ることは出来ませんでしたが、来年以降はまた素晴らしい花火を楽しみたいですね。

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