神話から生まれた桃太郎伝説

公開日: : 最終更新日:2023/03/31 昔話

ある日川に洗濯に出かけたおばあさんが、川上から流れてきた桃を家に持ち帰ります。おじいさんと一緒にその桃を食べようとして切ってみると、中から元気な男の子が飛び出してきました。驚いたおばあさんとおじいさんでしたが、その子に桃から生まれた桃太郎と名付けて大切に育てます。その後桃太郎はすくすくと育ち、立派な青年になりました。

ある日、鬼に金品を奪われ、困り果てる村人を見て、桃太郎は鬼退治に行くと言い出しました。おばあさんとおじいさんは反対しますが、桃太郎の熱意についに折れて、きびだんごを持たせて送り出します。途中、犬・猿・雉に鬼退治を手伝うかわりにきびだんごを与え、1人と3匹で鬼ヶ島へ行き、鬼たちを懲らしめ村人たちの金品を取り戻しました。

皆さんご存知の昔話「桃太郎」のあらすじです。

桃太郎は日本で人気のある昔話の1つですね。皆さんもきっと読んだことがありますよね。桃太郎は江戸時代から語り継がれてる「はなさか爺さん」「舌きりすずめ」「さるかに合戦」「かちかち山」とならんで「日本五大おとぎばなし」と呼ばれています。

桃太郎のモデルとは?

大本のお話は、桃太郎は紀元前3世紀頃に活躍した、第7代天皇・孝霊天皇(こうれいてんのう)の息子で、「古事記」や「日本書記」などに伝わる古代日本の皇族である「吉備津彦命(きびつひこのみこと)」がそのモデルであると言われています。

吉備津彦命は神武天皇の頃に、吉備(現在の岡山県)を支配し人々を苦しめていた温羅(おんら)を討ち、吉備の支配者になったという伝説があります。温羅とは元々は百済(くだら)の王子で、日本に渡り吉備の人々を苦しめていました。温羅が拠点として様々な城は、人々から「鬼の城(きのじょう)」と呼ばれていて、現在も岡山県には鬼の城跡があるんですね。物語の中でいう鬼ヶ島ですね。

鬼のように人々を苦しめていた温羅を討ち取った吉備津彦命を讃え、昔の人々はこの出来事を「桃太郎」の話を作って口承していったと考えられます。しかし、岡山県発祥として有名ではあるものの、実は北海道から沖縄まで似たような話が存在するため、いつ頃どこで成立したかというのは不明です。

江戸時代から語り継がれている「桃太郎」の原型が誕生したのは諸説ありますが、一説には「八犬伝」の作者である滝沢馬琴が、鎌倉時代前期までに成立した「保元物語(ほうげんものがたり)」に収められている話を模して、桃太郎が成立したのではないかと伝えています。

神話に登場する桃がモチーフに

ところで、なぜ「桃太郎」なのでしょう?桃から生まれたから、ではあるのですが、なぜ生まれてくるのが「桃」だったのでしょう?

日本の神話では、イザナミ、イザナギの物語に桃が出てきます。天地が開けた神代の昔、イザナギ・イザナミの夫婦の神様が現れ日本の国土を造り、次々と神々を産みました。しかし火の神を産んだ際に、イザナミは大火傷を負ってしまい死んでしまいます。まもなく黄泉(よみ)の国へ去ってしまったイザナミを取り戻すために、イザナギは黄泉の国に向かいます。ところが、美しかったイザナミは見るも不気味な姿に変っていて、その姿を見たイザナギはびっくりして逃げ出してしまいます。

醜い姿を見られたイザナミは怒り、シコメ軍という黄泉の国の鬼共を呼び集めて、イザナギを追いかけて捕えようとします。イザナギは十拳(とつか)の剣を抜いて、追手にふりつつ黄泉比良坂(よもつひらさか)とう所まで逃げます。

するとそこに大きな桃の木があり、イザナギが桃の実を鬼共にめがけて投げつけると、鬼共は頭をかかえて一目散に逃げ帰っていきました。イザナギが桃の実のおかげでこの危難を免れることができたことから、桃の実には意富加牟豆美命(オオカムズミノミコト)という神の名前がつけられました。この「桃」に力強く元気という意味を持つ「太郎」が結びついて桃太郎の話がつくられたとも言われていますね。

 

神話にも登場する「桃」をモチーフに、いまから約800年前に生まれた物語「桃太郎」は、長い長い歴史を経て現代の私たちに語り継がれているんですね。とても浪漫がありますね!

 

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