寒い季節、お地蔵さんだってお風呂に入りたい!

公開日: : 昔話

朝晩の冷え込みが本格化してきましたね。地域によっては大雪も降ったようで、いよいよ冬本番です。寒さが増してくると恋しくなるのがお風呂じゃないですか?疲れた時や寒い日は、あったかいお風呂に浸かると気持ちいいですよね。

日本のお風呂の始まり

もともと日本では神道の慣習で、川や滝で行われた沐浴の一種と思われる禊が行われていました。仏教では汚れを落とすことが仏に仕える者の大切な仕事とされ、多くの寺院で浴堂を構え施浴が行われたと言われています。また、入浴は七病を除き七福を得るという教えがあって、寺院へ参詣する客を入浴させたとも言われています。それからお風呂に入るという習慣が始まったとされています。

公衆浴場として「銭湯」が登場するのは安土桃山時代の終わり頃と言われています。それから時を経て江戸時代になると、庶民が銭湯を楽しむようになります。この頃は「湯」と「風呂」は別のもので、「湯」は今でいうお風呂と同じでお湯に体を浸すものでしたが、一方で「風呂」は蒸し風呂のようなもので蒸気を発生させ、その蒸気に人が蒸されて垢をこすりおとし、掛け湯をするというものでした。現在でいうとサウナですね。

慶長年間の末頃には、肩まで浸かる「据え風呂」が登場します。据え風呂は蒸気や薬湯ではなく、井戸水を沸かして入れるので「水(すい)風呂」とも呼ばれて、これが一般の庶民の家庭に広まっていきます。

お風呂が大好きな日本人ですが、実はお風呂好きは人間だけじゃなかったんです。三重県には、お地蔵さんがお風呂に入りに来るという民話が伝わっています。

お風呂に入るお地蔵さん

昔ある道端に、お地蔵さんがひとつありました。
ある夜、村人がお地蔵さんの前を通りかかったら、どういうわけか、お地蔵さんがいなくなっていました。
「ありゃ?おかしいぞ。確かにここにお地蔵さんがあったんじゃが。不思議なことじゃのう。」

村人は慌ててあたりを見回しましたが、どこにも見当たりません。これはえらいことだと隣の家へ駆け込んで叫びました。
「おい、えらいこっちゃ、地蔵さまがおらんようになってしもうた。」

すると隣人は、「そんなばかなことがあるもんか。石で出来てる地蔵さまがひとりで歩いてどこかへ行ったとでもいうのか?笑わすでないよ。」と言って、最初相手にしませんでしたが、念のためにと一緒に道に出て見ると、やっぱりお地蔵さんがちゃんとたっています。

「なんじゃあ、いるやないか。お前さんどうかしとるよ。」
「いやあ、さっきは絶対いなかったんじゃよ。ほんまに不思議なことやのう。」
「お前さん、キツネに化かされたんじゃないのかい。」
「いや、絶対そんなことはねえよ。わしが見た時はなかったんじゃ、、、。」
そう言いながら二人は帰って行っていきました。

そんなことがあった時、近くのお茶屋さんの家では、夜になると決って訪ねて来る人がおりました。
「こんばんは。すんまへんけどちょっと風呂に入らせてもらえまへんやろか?」
このお茶屋の家というのはそりゃあもうたいそう気のいい人たちで、お風呂をもらいにくる人に、
「どちらさんか存じませんが、どうぞ風呂に入ってくださいな。」と言って、気持ちよくお風呂をすすめてあげました。

それからというもの、この二つの不思議な話が村中に広まっていきました。村人たちが相談し合って、この不思議な話を確かめようということになり、お地蔵さんの前で番をしていました。あたりがだんだん薄暗くなって、日もとっぷり暮れたころ、お地蔵さんがそっと動き出しました。

「あ、動いた!」息をこらしていた村人たちは大声を出しかけました。とうとうお地蔵さんが動きだしたのです。村人はもうだまっておれず、大声で、「あー、歩きはじめたぞ。手も振っておる。エライこっちゃ!」石で出来たお地蔵さんの手足が動きだし、ゆっくりと歩き始めました。そして、歩いているうちに、少しずつ人間の姿に変わっていきました。

これを見ていた村人は、驚きながらもお地蔵さんのあとをつけて行きました。しばらくすると、お地蔵さんはいつものお茶屋さんの前で立ち止まり戸を叩きました。「こんばんは。すんまへんけど、お風呂に入らせてもらえまへんやろか。」そう声をかけると、すぐにお茶屋さんへ入って行きました。

翌朝、たちまち噂は広がり、お地蔵さんが人間に化けてお茶屋さんの家へお風呂をもらいに行くということが、村中に知れ渡りました。あくる晩、一眼動き出すお地蔵さんを見てみたいと、お地蔵さんの前はいっぱいの人だかりです。するとどうしたことか、お地蔵さんは動く気配すら見せません。そして、その夜からお地蔵さんがお茶屋さんに来ることはありませんでした。

それからしばらくして、石の地蔵とは知らずお風呂を使わせてあげていたお茶屋さんは、みるみる大金持ちになり、家族みんなが長生きしたそうです。そしてお嫁さんも来て幸せに暮らしました。村人たちは、このお地蔵さんを大事におまつりし、「福寿延命縁結地蔵」と名づけて、今もお参りをしています。

昔話が伝える掛け値無しの優しさ

というお話です。

日本の昔話では、見ず知らずの旅人や、困っている僧侶などに手を差し伸べて、親切にしてあげるお話がたくさんありますね。現代では、道端で困っていそうな人を見かけても、怪しい人かもしれない、声をかけて迷惑がられたらどうしようなんて思って、あまり声をかけないケースも多いのではないでしょうか?ましてや、家に見ず知らずの人が訪ねてきて、お風呂を貸して下さいなんて言ってきたら、皆さんどうしますか?TVでそんな番組があった気がしますが、一般的には貸さないでしょうね。

お風呂を貸すかどうかは別として、困ってそうな人がいたら声をかけたり、助けたりする気持ちは失いたくないですね。知らない人とは話さないようにしなさいと教えている親御さんも多いかと思いますが、日本の昔話を読んで、できれば積極的に声を掛け合える社会を再構築したいものです。そのために、大人も昔話を読み直してみるといいですね。

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