時代が求める進化と変化とスピード感

公開日: : 出版, 出版社, 本の電子化, 電子書籍

「電子書籍より紙の本を買ってもらえるとうれしい」という漫画編集者の方のツイートが物議を醸した。

ツイートの内容は、読者からたまに聞かれる「紙と電子、どちらを買うほうが作家さんへの応援になりますか?」という質問に、山中さんが「紙」と答え、「紙が売れないと次巻の部数が減るから」という理由を述べたもの。

単行本の刷り部数の決め方は、売れ行きの予測から判断される。次巻以降は前巻の販売数を鑑みて考えるため、紙の売れ行きが悪いと部数を減らすことになるという。採算がとれないと判断されれば、連載が打ち切りになることもあるそうだ。「紙」を中心に考えるこういった業界の事情があるため、当然編集者としては、紙が売れた方がありがたいのだろう。

そのツイートに対して、「電子書籍を軽視してはいないか」とか、「紙が売れないと次につながらないのは業界のシステムに問題があるのでは」などの、厳しい指摘があったようだ。ほかにも、「電子書籍の売り上げも勘案するよう評価システムを変えればいいだけ」といった意見も。業界内の旧態システムというのは、様々な分野で問題になることだが、出版業界においては結構古いシステムが足枷になっているという話を聞く。読者の生活環境やインフラが大きく変わってきている昨今、高度経済成長期やバブル期、TV全盛時代、インターネット初期の頃のシステムは、すでに破綻しているものが多いだろう。電子書籍はまだ出版業界の市場ではシェア率が20%程度ではあるものの、明らかにデジタルへシフトしているのはわかる。

ツイートへの様々な指摘に対して、山中さんはこう捕捉した。

「出版社が電子の売り上げを軽視しているわけではありません。紙は次巻の刷部数に直結し、電子は刷部数の概念がない、というのが言いたいことです。」

まさにここが問題というか課題であろうと思う。電子には当然刷部数という概念はないだろう。目に見える紙の方が判断材料としてはわかりやすい。しかし、漫画は電子(特にアプリ)で読むユーザーが多いのも事実だ。今後はさらにデジタルユーザーが増えることも予想できるだろう。読者が紙と電子に分散してしまっていることも当然考えられる。

山中さんのツイートに対し、電子書籍部門の先輩の方はこう指摘する。

「漫画が紙しかなかった時代には連載が終わっていたかもしれない作品が、電子版があるおかげで続けられる場合もある」「電子版から火が点いてヒットする作品もよくある」。「連載を続けるかどうかの指標は売上だけでなく、作品の将来性や社会的意義など、いろいろな要素がからんでくる」と。

まさに、業界に蔓延る紙の刷部数のみで次巻を決めるというシステムが続いていくことで、編集者の方だけでなく作者にとっても読者にとっても不幸な話になる。これまで業界を支え、そのシステムでやってきたことで成功した経験も多々あるだろう。それはそれとして大切にするとして、やはり読者の動向やインフラの変化に適応していくシステムづくりが必要だ。作品を楽しみに待っているファンに、悲しい思いをさせないためにも。

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