読書バリアフリー化は進んだのか?

公開日: : 障害者福祉, 電子書籍

法律施行から1年目の結果は?

2019年6月21日、衆議院本会議において「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)が可決・成立してから1年になろうとしています。

この法律は、視覚障害、発達障害、肢体不自由などの障害によって読書が困難な人々の、読書環境を整備することを目指して作られました。「障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現」を目的とし、国や自治体に、視覚障害者等の読書環境を整備する責務を定めています。公立図書館等と並んで学校図書館でも、視覚障害者等が利用しやすいメディア(点字図書・拡大図書・電子書籍等)の充実と、円滑な利用のための支援が行われるよう、国や自治体が必要な施策を講ずるものとしています。

しかしながら、その鍵となる点字図書や録音図書の充実はボランティア頼みだったり、出版社から書籍のデータ提供が進まなかったりと課題が多いです。点訳は文章を一文字ずつパソコン入力して点字データにし、誤字がないよう校正を複数回した後で紙に点字印刷するため、完成まで半年かかることもあるそうで。総務省の統計によると、年間の新刊書籍の出版数は約7万2千点。そのうち、視覚障害者を始め、 目で文字を読むことが困難な方々に対して、さまざまな情報を点字、 音声データなどで提供するネットワークである「サピエ図書館」と、「国立国会図書館に新たに登録される点字図書は約1万2千点にとどまります。点字図書館や利用者が、本のテキストデータを出版社から購入できれば、より早く点字や音声にできるということですが、データ複製や流出への懸念が根強く、大手出版社からのデータ提供はなかなか進んでいないのが現状です。

点字だけでなく、発達障害や身体障害など障害の特性に合わせて多様な読書環境のニーズがあります。上肢障害や寝たきりの人はページをめくるのが難しく、本を持てない人もいますね。弱視や高齢者には拡大文字や見やすい字体も必要になります。そういったニーズに対しては電子書籍が期待されますが、現在市場の8割以上をコミックが占めています。コミック以外の書籍に関しては、なかなか電子書籍化されていません。

書籍電子化の鍵はセキュリティーと協調体制

私たちは既刊本や絶版本の電子化を勧めていますが、それには読書環境のバリアフリー化の想いもあります。テキストファイル形式のデータさえあれば、障がい者の方がご自身で点訳ソフトを使うこともできます。スマートフォンやパソコンを使って文字を拡大したり、音声読み上げ機能を使ったりすることも可能ですね。こちらもやはりデータ複製や流出への懸念から、出版社からデータが提供されにくい状況にあります。出版社や著者にとって原稿は財産です。そう簡単にデータ提供は出来ないというのもわかります。

米国のNPOが展開するインターネット図書館「ブックシェア」は、視覚障害や発達障害があって本を読むことが難しい子どもやその親から依頼を受けると、無料で書籍をデータにして届けるサービスが行われています。そこではデータを開いた個人を特定できる機能を備えられており、複製などの不正使用があった場合は追跡できる仕組みになっているそうです。日本でも自炊や漫画村などの問題があり、デジタルコンテンツの不正利用については、ずっと議論されてきました。予算はかかるものの、不正利用を防止する策は色々講じることができます。

法律施行から1年となる今、業界全体が協調して他国の施策を参考にしながら、誰もが弊害なく書籍や情報にアクセスできる仕組みを構築する時にきているのではないでしょうか?本当の意味での読書バリアフリー化が実現できることを願ってやみません。

 

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