【海外でも人気の日本の昔話】外国人の意外な反応

公開日: : 昔話

先日のブログで、私たちの出版したバイリンガル絵本「日本の昔話名作シリーズ」が、ハワイのモンテッソーリ園に届けられたと書きました。
ハワイの先生方もとても喜んでくれています。

日本の文化に興味を持つ外国人の方は、年々増えていますね。教育機関等で日本語を学ぶ外国人の数は、400万人弱と言われています。日本のアニメやマンガ、J-POPなどのサブカルチャーをきっかけにして、日本語に興味を持ち、さらに日本の伝統文化を学ぶというケースが多いと聞きます。

昔話も文化の1つですね。昔話や神話はどこの国にもありますが、日本の昔話は他国のそれとは少し趣が違うのかもしれません。
海外のものよりも教訓として学ぶ点が多いのでしょうか。

昨年のものですが、東洋経済オンラインにこんな記事がありました。

日本好き外国人が衝撃を受けた「日本の昔話」3つ

https://toyokeizai.net/articles/-/607899

ギリシャと日本のハーフである、アナスタシア・新井・カチャントニさんのお話しです。

日本の昔話についてですが、たくさんの話を聞いていると、好きな話、少し違和感を覚える話、「これはちょっと……」と感じる話など、いろいろと感じるところがあります。今回は、かなり個人的ではありますが、お気に入りの話、それは教育上どうなの?と感じる話、絶対受け入れられない話について書いていこうと思います。

アナスタシアさんは、日本の昔話のどの作品にどんなことを感じたのか?

まず好きな作品として『笠地蔵』を挙げていらっしゃいます。
“とても心温まるよいお話だと思いますし、心優しい子どもを育てるのにもってこいだと思います。”

さらに『分福茶釜』
化ける術を忘れたたぬきが、引き取ってくれたくず屋さんに恩を感じて、くず屋さんをお金持ちにします。そして、役目を果たした茶釜のままのたぬきがお寺に戻され、静かに暮らすことができるようになるという、ハッピーエンドなところがいいとおっしゃっています。

衝撃を受けたというのが、『猿蟹合戦』と『かちかち山』だそうです。

『猿蟹合戦』では、蟹が柿の種を植えて柿の木に成長して実がなったところ、木に登れない蟹が猿に柿の実を取ってもらうよう頼みます。スルスルと木に登った猿ですが、自分ばかりが食べて蟹に分けてあげません。そこで蟹が「猿さん、私にも分けてくださいよ」と言うとまだ固い青い柿の実を投げつけ、それに当たった蟹は死んでしまいます。あまりに突然でしかも当然のような流れで蟹が亡くなってしまったので、初めて聞いたときには一瞬頭が話についていけませんでした。

『かちかち山』は、もっと衝撃的でした。いたずら好きのたぬきをわなにかけて捕まえ家に縛っておいたところ、たぬきはおばあさんに甘い言葉を投げかけ、縄をほどかせることに成功します。ところが、ここでたぬきはおばあさんを殺してしまいます。

「うまいたぬき汁ができたかな」とおじいさんが畑仕事から戻ると、たぬきが「うまいばばあ汁だよ!」と言いながら家を出ていきます。おばあさんが亡くなってしまう展開に加えて「ばばあ汁」という表現がとても衝撃的でした。

たしかに、この2作品は衝撃的かもしれませんね。子どもにとっては、刺激が強いかもしれない。ですので、本によっては表現をやわらかくしたり、オブラートに包む感じにしているものもあります。

そして『ごんぎつね』については、このように語っています。

確かにごんは悪さをたくさんしたかもしれません。でも、兵十に対して謝りたかった気持ちは本当です。そのような気持ちを持って行動していたにもかかわらず、撃ち殺されてしまうというのは、あまりにもひどい終わり方だと感じました。

現実には、このようなケースはたくさんあると思います。でも、せめてお話の中では、ごんの謝りたいという気持ちが尊重されてもよいのではないでしょうか?これだと、一回失敗したら、それを取り返すことはできないと感じてしまいます。

ごんぎつねは個人的に好きな作品ですが、僕も子どもながらに、最後は兵十とわかり合って幸せな結末を迎えてほしかったと思いましたね。しかし、そうしなかった作者の意図もあるわけです。今のように様々なコンテンツが簡単に手に入らなかった時代は、全てがハッピーエンドではなく、ある種残酷な表現や厳しい現実をつきつける話を口承することで、子どもたちに人として大切なことをリアルに伝えていたのではないかと思います。

 

時代によって、国によって、日本の昔話の捉え方や考え方は様々だと思います。それは、日本人の我々が海外の神話や童話を読んでも同じことが言えます。その違いを認め合いながら、それぞれの国の文化や人生観を理解することで、相互理解が深まるのではないでしょうか。そのために昔話は最高のコンテンツと言えますね。

日本の昔話に対して海外出身者の感想

ちなみに、私たちの出版した「日本の昔話名作シリーズ」を読んだ海外出身者の方は、こんな感想を持ってくれました。

バイリンガルの「日本の昔話名作シリーズ」を読んだおかげで、本を中心にしたつながりというのは、一人の作者と一人の読者の間の直線ではなく、翻訳家、イラストレーター、編集者などの協力者をつなぐ輪であることに気づきました。障がい者のアーティストによる可愛い絵のおかげで、絵本を読むのはまるで物語の世界に溶け込むような体験になりました。海外で日本の文化の紹介に使う資料や、語学の教材としても活用ができるのではないかと思います。

​ポーランド出身 アレクサンドラ 木南さん

 

「かさじぞう」文章は日本語も英語も読みやすく、フリガナも付いていますので、日本語を勉強している人にとっても、英語を勉強している人にとっても楽しみやすいです。絵はとても可愛いです。おじいさん、おばあさんの優しさを上手に描いています。お地蔵様たちは雪の中でも笑顔になっているにもかかわらず、おじいさんはお地蔵様が寒いと分かったというところが日本的です。感動しました。

「いっすんぼうし」上下関係を表現する日本語の言葉もあるので、昔話の場面を例にして、説明することができます。イラストは色鮮やかでアニメっぽいですが、いっすんぼうしの活気が伝わります。いっすんぼうしの小ささや子供っぽさがピンクのほっぺで強調されて、伝わりやすいです。

​チェコ出身 カルロヴァー ペトラさん

 

このプロジェクトのことを知って、とても感動しました。私が日本学者として好きになった日本の昔話を通して、多くの人に語学力が提供されると思ったからです。私も、日本語などの言語を学習したとき、その言語と英語で書かれた本を利用しました。私はこの絵本の翻訳に携わりました。文化や文学に関する知識を使い、出来るだけ自然な英語に翻訳するように頑張りました。文章は子どもさん向けで優しい言葉になっています。

皆さん「よく学べ、よく遊べ」という言葉の通り、楽しみながらこの昔話絵本を読んでみてくださいね。

​ブルガリア出身 マルティン ペトロフさん

 

まずは、表紙がかわいい!タイトルもかわいい!という第一印象。それに、読みやすかったので、あっという間に読んでしまった。バイリンガルの私からすると、子供には幼い頃から多言語を聞かせるのは、将来のバイリンガル人材に繋がると思う。しかも、英語にもフリガナを付けたのはとても便利だし、子供と共に親も楽しめる一冊だと思う。はじめから日本語と英語両方で読み聞かせるのも良いし、小さい時は日本語で読んで、英語教育が始まってから英語の教材として使うのも良い。色々な使い方ができるのも、このバイリンガル絵本の魅力的なところだと思う。私は「かさじぞう」の内容を読んだ時、「魚心あれば水心」ということわざを思い出した。子供はこの絵本を読むことで、日本の教訓を学べる。バイリンガル絵本、是非おすすめします。

ルーマニア出身 アンドレア ドゥミトゥルさん

 

日本に9年間住んでいますが、今回初めて昔話の絵本を読んで、とても新鮮でした。

やさしい日本語の文章と可愛らしい絵があって、本当に分かりやすく癒されます。

個性のある色使いやスタイルで描かれた絵を見ると、様々な表現を感じて、描いた人の個性も伝わってきます。世界中の友達が、このような絵本を通じて、日本の昔話に出逢えたらいいなと思います。

ベトナム出身 タン ホンさん

 

日本の昔話名作シリーズの作品「かさじぞう」は、日本語及び英語の併記版として日本の昔話を世界中の子供に紹介する絵本です。人々に優しくすれば、その恩は返されるということを語りますが、「かさじぞう」の老夫婦は人に優しくするだけではなく、お地蔵様まで大事にして、雪に埋もれかける際に笠を被らせます。世界を構成する物事全てを大切にすることを教えています。日本の文化に深く関わるこの教えは、日本語がまだ話せない、読めない子供の心にまで届きます。

日・英の併記版により、日本で長い世代を経て伝わってきた忍耐や勇気の話を、世界中の子供に楽しく、やさしく伝えることができますね。

スロベニア出身 ニーナ ハビャンさん

 

みなさんも、ご興味がありましたら是非読んでみて下さいね!

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