してはいけないと言われるとしたくなるのが人の性
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最終更新日:2023/03/18
昔話
本格的な春が訪れましたね。我が家の梅の花もどんどん蕾が開いています。
春の花と言うと、真っ先に桜が思い浮かびますが、梅もまた可憐で美しいですよね。
個人的には、桜よりも梅の花が咲くと春の訪れを感じます。
大陸から薬として伝わってきた梅
さて、この梅ですが、もともと日本にあったものではないんですね。梅が日本に伝わってきたのは、3世紀とも8世紀とも言われています。百済(くだら)の帰化人・王仁(わに)がもたらしたとする説や、欽明天皇(531年即位)の大和時代に、中国・呉の高僧がもたらしたという説があります。 また遣唐使が漢方薬として持ち帰ってきたという説も。
梅の原産地は中国の長江中流、湖北省の山岳部や四川省で、2000年前に書かれた中国最古の薬物学書『神農本草経』には、すでに梅の効用が説かれていました。
中国では青梅を薬用として使用していたそうです。梅の実を、かごに入れ、竃戸(かまど)の煙で黒くいぶし、乾燥させて作ります。色が黒く香気があり、カラスのように黒い色から「烏梅(うばい)」と名付けられたと言われています。
日本の文献に「梅」という文字が最初に現れるのは、日本最初の漢詩集といわれる『懐風藻(かいふうそう)』(751年)におさめられている、葛野王(かどののおおきみ)の「春日翫鶯梅」と題する五言詩です。
花より実が重宝される梅
また、日本最古の歌集『万葉集』にも、梅を題材とした和歌が数多くあります。
このように中国から日本に伝来した梅は、珍しさもあり多くの人たちに愛されました。しかし、梅が重宝されたのは、その花の美しさだけではありません。古代から梅の実にさまざまな効能のあることが知られており、そのため人々から広く利用されたのです。
梅の実は奈良時代にはすでに柿・桃・梨・あんずなどと同様に生菓子に加工して食べていたようです。そして、時代を経るに従って梅の効用を体験的に知るようになり、梅の塩漬けを保存食、食薬品として用いるようになりました。
戦国時代になると梅の効用はますます認められ、干した梅は軽くてかさばらず、日もちもよいので、兵糧食として大変重宝されました。甲州流秘書にある「忍術兵糧丸」は、寒ざらしの米、蕎麦粉、かつお節、鰻の白干、梅干しの果肉、赤松の木肌を混ぜてつくったものです。
江戸時代に入ると、貴族や武士だけでなく、庶民の食卓にも梅干しがのぼるようになりました。
江戸末期には現在の梅肉エキスの原型が考案され、『諸国古伝秘方』(1817年)という日本各地にあった健康法の口伝を記した文献にその作り方が記されています。
この頃から、梅は人々の暮らしに欠かせない存在になっていくんですね。
桜は花を眺めて楽しむもので、梅はどちらかというと実の方の実用性が注目されます。
梅が出てくる昔話『うぐいす長者』
さて、今日はそんな梅が出てくる昔話を1つ。
むかしある商人の男がおりました。
その日は何も売れず、男がトボトボと山道を歩いていると、いつの間にか道に迷ってしまいました。
しばらくさまよっていると、花を咲かせた梅の木を見つけました。
そして、その梅の木の下には若い美しい娘が4人もおりました。
娘たちに導かれ、男は娘達の住む豪邸へと向かいました。
そこでは、娘達は母親と5人で暮らしてる様子で、男の持っていたクシやカンザシなどを全部買ってくれました。
そして、「女ばかりで暮らしており心細いから、もし良かったら娘の1人と結婚してこのままここにいてくれませんか?」
と母親が言いました。
男は快諾して、毎日美人4の娘たちと楽しく遊んで暮らすようになりました。
そんなある日のこと、
「娘達と出かけてくるけど、もし留守中退屈だったら蔵を覗いて遊んでいなさいな。4つあるうちの3つまではいいけど、4つ目は絶対見たらダメですよ」と言って母親達5人は出かけていきました。
1つ目の蔵は夏の景色で、男の体はいつの間にか鳥になっており、夏の海の上を飛び回りました。
2つ目の蔵は秋の景色で、紅葉した山を飛び回ります。
3つ目の蔵は冬の景色。雪の降り積もった山里の上を大喜びで飛び回りました。
男は「4つ目はきっと春だろう」と思い、春の景色も見たみたくなりました。
これまでの3つがあまりにも楽しかったから開けたくて仕方がありません。
でも絶対に見てはいけないと言われています。
それでも、「ちょっとだけなら…」と男は4つ目の蔵を開けてしまいました。
4つ目の蔵は予想通り春の景色でした。
どこまでも続く梅の木々を渡りながら男は感動していました。
しばらく飛んでいると、目線の先の1本の梅に5羽のうぐいすが留まっています。
「おや」 と思いながら男が近づいていくと、5羽の目つきが鋭くなりこちらに向かって飛んできます。
男は怖くなって必死に逃げて蔵から飛び出しました。
蔵から出たところには、母親たち5人が立っていて、
「4番目は開けてはいけないと言ったのに、開けてしまいましたね。あなたとはもう一緒に暮らせません」
と言われ、ハッと我に返ると娘達と最初に会った梅の木の下に戻ってました。
どうでしたか?
約束事はしっかり守らないといけないというお話です。
早くもっとあたたかくなって、春の景色を楽しみたいですね。
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