誰の「不」を解消できるか?
先日、月に一回の山元学校に参加してきた。
山元雅信氏が開催する私塾山元学校、毎月様々な国の大使や、ビジネス、政治、社会貢献活動など、各界のトップを走る人物を招いて、プレゼンテーションが行われる。聴いているだけでも圧倒されるが、この場でプレゼンテーションすると、それを聴いた参加者の反応の速さと強さに圧倒される。
3月のプレゼンターの中には、僕が楽しみにしている人物が二人いた。
一人は僕たちの仲間、Japan Sake Buchoこと今泉幸夫。そしてもう一人は、株式会社オリィ研究所の吉藤オリィこと吉藤健太朗氏。
残念ながら、時間の関係で今泉のプレゼンテーションは実現できなかったが、今回参加者のみなさんに、鏡開き(お酒の方)の意義、歴史、そして意義を伝えようと、一所懸命準備していた。1月の山元学校では、実際に鏡開きを実施し、たくさんのみなさんから「楽しかった」「とても盛り上がった」「とてもいい雰囲気になった」といった声をいただいた。次回改めて鏡開きプレゼンが聴けることを期待しよう。
さて、もう一人のお目当てであった、吉藤オリィ氏。
様々なメディアに出演しているので、ご存知の人も多いかと思うが、彼は「OriHime」というロボットを作っている。高専で人工知能を研究した後大学に進学し、「孤独解消」を目的とした「分身ロボット」の研究開発に取り組み、自身の研究室を立ち上げて、2012年株式会社オリィ研究所を設立した。
その経歴から見ると、「OriHime」は、人口知能を搭載したロボットかと思うがそうではない。OriHimeにはカメラ・マイク・スピーカーが搭載されており、家や会社など行きたいところに置き、インターネットを通して操作できる。操作にはアプリを利用し、スマホやタブレットで簡単に動かすことができる。OriHimeを操作することで、周囲を見回したり、あたりの人と「あたかもその人がそこにいるように」会話もできてしまう。なので、どんなに離れていても、入院していても、家族や友人との日常の時間を提供することができるというものだ。
氏曰く、
ロボットと人ではなく、人と人をつなぐロボット
『対孤独用 コミュニケーションロボット』
なぜ人と人をつなぐのか?
オリィ氏は、小学校から中学にかけての3年半、ストレスと自宅療養でほとんど学校に通う事ができなかった。過度なストレスで精神的、肉体的に弱ってしまい、人前に出られなくなり、勉強は遅れて劣等感を抱き、友人らの成長について行けなくなった。鬱状態で毎日天井を眺め続け、日本語すらも忘れかけた状態になったそうだ。そして、強い孤独に苛まれたという。
そんな頃、折り紙をきっかけにものづくりに興味を持ち、高校時代から新しい車椅子の発明で受賞するようになる。そして、その技術力が注目され始め、メディアに取り上げられるようになる。この頃から、各方面より様々な相談が舞い込むようになり、話を聞いている中で、核家族、無縁社会に関係する「孤独」という問題に、多くの高齢者や入院患者などを苦しめられている現状を知った。自身が思春期に大いなる「孤独」を経験したことで、「孤独問題を解決したい」と真剣に考えるようになる。工業高等専門学校で人工知能について学んだオリィ氏。人工知能の開発を進める傍ら、福祉ボランティアをしている中で、「人工知能が人を癒している未来」よりも、「親しい人と人同士がつながり、孤独でなくなる未来」を創りたいと思うようになったそうだ。
オリィ氏のものづくりの原点は、まさに「不」の解消。様々な理由で、人とつながりが持てなくなった人たちの「孤独」という「不」を解決するためにチャレンジを続けている。株式会社オリィ研究所には、4歳の時に交通事故による頸髄損傷で肢体不自由となり、呼吸器を装着した状態で23年間療養を続けている社員がいる。OriHimeを活用して、彼は毎日研究所に出社しているのだ。
どんな仕事でもそうだが、その仕事が誰かの「不」の解消に役立ち、ひいては多くの人たちの暮らしや生活を変え、未来を変えるものであるべきだと思う。僕たちが現在行っている電子書籍事業は、本の力で経世済民を実現することをビジョンとしている。それがどんな人のどんな「不」を解消し、後世にどんな未来を残せるのか、より具体的に落とし込みながら進めようと、オリィ氏の話を聴いて思った。
株式会社オリィ研究所
http://orylab.com/