休耕地にしない取り組みを


■過疎地の農業■

 

今年四月に、僕たち家族は僕の実家である茨城で、新しい暮らしを始めました。東京のベッドタウン埼玉の住宅街から引っ越してきた妻と娘には、毎日が新しい発見だらけ。カタツムリやトカゲや蚊の大きさに驚き、日常的に庭を走り回る野うさぎや、キジ、タヌキを嬉々として追いかけ回し、風で木々の葉が擦れ合う音しかしない夜の静寂にちょっと不安になったり、田舎暮らしを楽しんで(?)いるようです。

 

そんな新しい暮らしが始まる際に、畑に植えた野菜が収穫の時期を迎えています。キュウリ、トマト、モロヘイヤ、ナスなど、夏に収穫できるようにと、家族で植えたものです。完全に自給自足とはいかないけれど、野菜は自分たちで作って食べようと決めています。

 

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■定番化する太陽光パネル■

 

先日この地域でお祭りがあり、子どもたちがお神輿を担いで、近隣住民のお宅を練り歩きました。その際にご近所のお父さんがこんなことを話していたと、妻が教えてくれました。「自宅から数キロ離れたところに栗畑があって、戦後から60年管理してきたけど、俺の代で売ろうと思っている。太陽光パネルの会社が、売ってくれって言っているので、連絡しようと思ってる」と。そのお宅は、子どもさんが全員女の子で、畑をやる後継者がいないとのこと。農家が減少する理由の一番大きなものは、この後継者問題だと思う。

 

我が家の周囲は、もともと田畑や竹林や杉林、桑畑や果樹園などに囲まれた、生物多様性に恵まれた場所でした。それがここ数年で、ほとんどが太陽光パネルに変わり、年に数回の草刈り作業のみの管理体制で、荒れ放題になっています。

 

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          草に覆われてしまった耕作放棄地

 

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         荒れてしまった太陽光パネルの敷地内

 

茨城県における耕作放棄地面積は、農家数の減少や高齢化の進行などにより年々増加し、平成27年には23,918haとなっています。耕作放棄地の伸び率は鈍化の傾向にあるとはいうものの、確実にそのエリアは広がっていますね。(茨城県耕作放棄地対策協議会より)

そんな耕作放棄地対策として、県が耕作放棄地再生利用緊急対策交付金を出して、耕作放棄地を農地として活用する取組を推進しています。使われていない畑・水田・樹園地(耕作放棄地)を農地として活用する場合に、助成金が交付される他、農業用ビニールハウス・果樹棚の設置や市民農園・教育ファーム等の整備費用も助成の対象となるというものです。

 

例えば、

■荒れた農地の再生作業+土壌改良(土づくり)

障害物除去・深耕・整地、肥料、堆肥の投入

50,000円/10a 中心的経営体に集約化(面的集約1㏊以上)する場合は、2割加算

■営農定着(種苗等資材)

25,000円/10a 「畑作物の直接支払交付金の対象作物」と「米及び水田活用の直接支払交付金の交付対象農地」は支援対象外

■機械・施設の整備等を支援します

農業用機械のリース、農業用施設(ハウス、果樹棚等)の整備、用排水施設等
補助率 1/2

■農業体験施設を整備

市民農園・教育ファームの設置

再生事業+土地改良+農機具収納施設等の整備に助成

補助率 1/2

といったものがあります。

 

条件としては、再生利用計画の作成や、再生作業を行うに当たって再生費用が10万円/10a以上必要とする耕作放棄地が対象となるといったこと、土地所有者に代わり再生作業を行い、再生した農地を5年間以上耕作することが必要といったことがあります。

この中で、5年間以上耕作するというのが、なかなか大変なのではないかと思うのです。

 

■休耕地にしない取り組みを■

 

我が家もそうですが、現在生産している稲田や畑は、長い年月をかけて出来たものだと思います。先祖代々、気が遠くなるような手間をかけて作ってきたものなんですね。稲田や畑は、一度休耕して耕作を放棄すれば自然に戻り0になってしまう。

耕作を放棄すると当然草だらけになり、背の低い草が生え始め、そのうち背の高い草、そして低灌木が自生するようになります。そのように自然の状態に還った土地を、改めて農地にするためには、まず地上部の草や低灌木を刈り取りしなくてはなりません。機械を使って刈り取りをしても根は残ってしまい、それが紋羽を発生させる原因になります。土に肥料足りないからということで、大量に投入する有機物も紋羽を発生させてしまいます。そのような土地では、葉物野菜や果樹にしても、サツマイモやジャガイモ、長芋などを植えても、うまく育ちません。

 

行政は休耕地の再利用を進めていますが、その休耕地がなぜ休耕地となったのか、どんな問題があるのかを理解していないと、休耕地の農地活用に参入したとしても、5年間の耕作が続けられないまま、また耕作を放棄する結果にもなりえますね。

その意味で、先祖から引き継いだ農地は本当に価値の高いものだと思います。一年や二年で作れるものではありませんからね。今後食糧不足になると、さらにその価値は高まっていくでしょう。だからこそ、まず耕作放棄地にしない方法を考える必要があると思います。黙々と一人で進める農業ももちろん大事ですが、コミュニティとして近隣住民や、有志たちで農地を有効活用していくことも大事ですね。

 

過疎化と耕作放棄地が広がる茨城県の片田舎で、僕自身もコミュニティ農業を実践していきます。

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