農業の新たな役割


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      やっと根付いて育ち始めた我が家のキュウリ

 

梅雨が明けた途端、秋になってしまったかと思うような天候が続いた関東地方。

ようやく夏らしい蒸し暑さが戻ってきました。台風の影響なのか、陽の光が燦々と降り注ぐような日は少ないですね。そうなると、葉物野菜などは生育が悪くなり、また売り物にならないといった心配も出てきます。農業は、まさに天気とのお付き合いで、一筋縄ではいかないものです。我が家でも先日キュウリの苗を植えて、ようやく根付いてすくすくと育ち始めました。うまい具合に晴れたり雨が降ったりしてくれるといいのですが。

 

そういう意味で、農業はとても大変な産業だと思います。僕は兼業農家なわけですが、本業が休みの時に、トラクターでうなおうと計画していても、その日が雨だったら圃場には入れない。それでも、他にやることはあるからいいけど、少しずつの計画のズレが、後々作物の生育に関わってきてしまうんですね。兼業でも続けていけないといって、農業を止めてしまう人がいるのもわかる気がします。

 

■農業の新たな役割を考える時

 

30年前、我が家は野菜や米を農協に出していました。しかしながらその買取価格が安く、父の代から専業農家ではなくなったために、農協への出荷をやめました。今では、民間企業が運営するファーマーズマーケットに出荷しています。ただその場合、店にとって機会損失の無いように、商品が無くなりそうになったら、あれとこれを持ってきて欲しいと連絡があり、急いで収穫して持って行くものの、余ってしまったら廃棄される。その廃棄量が尋常では無い。正直言って、やり方に疑問符が幾つも付く。

 

従来の農家が果たしてきた、農畜産物を生産し国民の食を支えるという役割に加えて、これからの農家は経済、産業面においても新たな展開をする必要があると思う。農業は、農畜産物の生産をする第1次産業であり、これまではものづくりをする職人タイプの人が多かったのではないでしょうか。出荷先が農協だけに限られていた時代は、職人さんのほうが向いていたかもしれない。それから、第2次産業の食品加工や、第3次産業の流通、販売が可能になり、現在では生産だけでなく加工や流通、販売にも業務展開する「第6次産業」が主流となっています。インターネットやSNSの普及で、消費者と直接繋がることができるようになることで、生産から販売までだれでもできる環境が整ったのが大きな要因となっているでしょう。

 

コミュニティとしての農業

 

さらに今は、モノを売ることから、体験をさせる、味わうといった「コト」を売る農業もどんどん増えていますね。自分の手でタネを撒いて、収穫して、それを食す。元来の農業の形である自給自足ではあるのですが、あくまでも体験というコトを買っているだけで、農業にどっぷりと携わっているわけではない。そんなコンビニエンスな農業も、ますます増えるでしょうね。

 

北欧デンマークにコロニヘーヴというものがあります。
コロニヘーヴは「庭を持てない人が週末、自然を感じながら、家族との時間を楽しむために通う場所」のことで、デンマーク語のコロニー(集合)と、ヘーヴ(庭)が掛け合わされてできた言葉。「庭のコミュニティ」という意味を持ちます。

 

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       デンマークのブロンビーにあるコロニヘーヴ

 

1区画に小さな小屋と小さな庭があり、それが5つ以上集まっている集合体のことを「コロニヘーヴ」と呼び、北欧のデンマークで、18世紀末ごろから広まっていきました。本場デンマークでは、小さな小屋つきの庭が20~30区画集まって、ひとつのコロニヘーヴとなっています。別荘とは違い、都会に暮らす人々が、週末の余暇を過ごすための場所であり、野菜や植物を育てたり、芝生やりんごの木植えて庭を楽しむなど、友人とバーベキューをしたりと、人それぞれの使い方をしています。

 

区画の中には、必ずシンプルな作りの小屋があるのが特徴で、農作業時にひと休みしたり、ちょっとした料理をするために使われます。泊まれることは泊まれるけれど、住居として利用しません。デンマークの場合、水道は整備されていても、電気やガスがあるところは少なく、トイレは共同のスペースにあることが多いのが特徴です。

 

そもそもは、貧しい人々のための農地として、市が土地を貸し出すことからはじまり、現在でもコロニヘーヴ法という法律が存在するそう。別荘としての使用はできないけれど、菜園を使用目的として格安で借りることができる。平均使用料は、1㎡あたり約2DKR(日本円で約50円)。400㎡くらいのコロニヘーヴで、年間約20,000円ほどで利用できる。 公立・私立を問わず、年間の使用料は国が定めている。いわゆる「市民農園」と同じような役割を果たすものですね。

 

日本でも全国各地で公立・私立の市民農園がありますが、コロニヘーヴのような週末のレジャー的な要素よりも、近所の人たちが家庭菜園をする場といったものが多いのではないでしょうか。過疎地の耕作放棄地となった土地を、自治体や企業が買い上げて、都心部の人たちに安く貸して、最低限の管理を周辺住民の農業経験者であり、就農希望の若者に委託することで、農地を荒らすことなく雇用を生み出すこともできると思うのです。そのためには、日本でもコロニヘーヴ=農業のコミュニティという考えを浸透させていく必要がありますね。

 

これから専業で農業をする人たちも増えて行くでしょう。もちろん作物を作って、日本の食を支えていくのも大事ですが、さらに新たな農業の形を創っていきたいですね。

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