共生の時代を目指して
先月、今月とデンマーク王国に関する2つの講演を聴いてきました。
デンマークというと、人魚姫の像、アンデルセン、レゴブロック、カールスバーグ、hummelといったところが有名でしょうか?最近ではFLYING TIGER COPENHAGENや、レストランnoma、幸福度世界一といったことでも名の知られる国かと思います。椅子好きの僕としては、ハンス・J・ヴェグナーやアルネ・ヤコブセンなどが最初に思い浮かびます。
「世界三大がっかり」と言われる人魚姫の像 僕はがっかりしなかったけど…
さて、そんなデンマークについてのどんな講演だったかと言うと、1つはバイオマスエネルギーの現状と取組みについて、もう1つはデンマークにおける幸福感と信頼関係についてのものでした。
デンマークといえば風力発電がイメージされるかと思います。つい先日も140%の電力を風から得たという記事がありました。2020年までに電力供給の半分を風力でまかなうという目標を掲げ、2050年までには化石燃料から完全に脱却すると言います。2014年のエネルギー・ミックスを見ても、化石燃料73%に対して再生可能エネルギーが27%となっています。着々とその道を歩んでいますね。
実は再生可能エネルギーの内訳で最も多いのは「バイオマス」で、全体の52%を占めています。次いで風力の21%です。バイオマスと廃棄物、バイオ燃料を合わせると再生可能エネルギーの67%を占めています。デンマークの場合、売電というよりは熱電併給利用がされており、特に地域暖房のための熱利用が活発です。そしてこういった熱利用のための地域暖房用バイオマスプラントは、地域の住民たちで持っていることがほとんどで、まさに地産地消・自産自消のエネルギーなんです。
さて、デンマークに限らず北欧各国は税金が高いことでも知られています。
所得税は最高税率が 50%を超え、消費税率は25%です…
しかしながら国民が支払う税金は、きちんと国の社会福祉政策や教育、医療に使われています。だから少々高くても仕方ないと納得できるのでしょうかね。
社会福祉においては「胎児から墓場まで」と言われ、胎児の生育診査から葬儀への支援まで、人が存在する上で必要な支援を、国と地方行政が中に立って扶助しています。医療費が基本的に無料で、ホームドクターやソーシャルワーカーが生まれたときに各一人つくといいます。当然年金制度も充実しています。
教育面では小学校から大学まで教育費の自己負担はなく、何度でもやり直しできる学校教育と多岐に渡る職業教育を行います。高校や大学への入学試験がなく、そのため進学のための塾や予備校もない。いい高校からいい大学に入りいい会社に入ることが目的ではなく、自活できるための職業選択が可能にする教育指導なんですね。
なぜこのような高負担高福祉の制度が成り立っているのか?
歴史的に見れば、1626年のドイツ30年戦争への介入・敗退から始まり、その後トルステンソン戦争、大北方戦争、ナポレオン戦争でも敗北を喫し、極めつけはプロイセン王国との2度に渡るシュレースヴィヒ戦争に敗れ、南部の肥沃な大地を失うことで経済が危機的状況に瀕したということが大きく関わっています。
経済危機を経験したデンマークが導き出したのは、人(国民)こそが宝だということ。そのために福祉の制度を厚くし、国民の命を守ることを最優先に考えるようになったんですね。その結果負担も大きくなりますが、それでもデンマークの人々は国家を信じ、互いを信じあっています。
「あなたは他の人を信頼しますか?」という信頼調査では、国民の78%が信頼すると答えています。(※世界86カ国の平均は25%)
デンマークの現在の豊かさ、幸福感はこの信頼関係というのが大きいのでしょうね。デンマークの豊かさの25%が資本財、50%が人財、残る25%が信頼だと言われているそうです。
立ち返って日本人の我々はどうか?
子供の頃から受験戦争や就職活動などで心をすり減らし、競争社会の中で他を排斥し、富めるものは富み、貧しいものはどこまでも貧しい。そんな経済的・精神的格差の大きな国になってしまいました。儲かればいい、売れればいい、勝てばいい…そんな風潮が長いこと続いている気がします。それで経済成長してきたことは否定できないけど、これからは徐々に変えていく必要があると思うのです。
「競争」から「共生」、「疑心」から「信頼」へとシフトチェンジする時が来ていますね。
とはいえ、日本がいまのデンマークになるには100年以上はかかるでしょうから、日本ならではの共生社会を築いていけたらいいなと思います。そこで大切なのは、やっぱり教育なんだろうなぁ。
最後に内村鑑三氏の「デンマルク国の話」の言葉を引いて
「富は有利化されたるエネルギー(力)であります。しかしてエネルギーは太陽の光線にもあります。海の波濤にもあります。吹く風にもあります。噴火する火山にもあります。もしこれを利用するを得ますればこれらはみなことごとく富源であります。」
「…外に拡がらんとするよりは内を開発すべきであります。」
日本にもたくさんの財産が在ります。もっともっと内に目を向けて、その宝を磨いていきたいですね。
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