知日家フランス人

公開日: : 最終更新日:2025/05/13 未分類

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【レヴィ=ストロース】

レヴィ=ストロースと日本:構造の彼方に見た静かな美

高名な知日家フランス人です。

文化人類学の巨人、クロード・レヴィ=ストロース(Claude Lévi-Strauss)。

彼は、アマゾンの密林を駆け抜けただけの探究者ではありませんでした。

実は、日本にも、深く、静かに、心を寄せた人だったのです。

レヴィ=ストロースが日本文化に強い関心を示したのは、

晩年に近づいてからのことでした。

特に1980年代以降、日本の神話や祭礼、庭園、建築に「普遍的構造」

を見出そうとし、幾度も日本を訪れています。

彼にとって日本とは、単なる異国の文化ではなく、人間存在の普遍に肉薄する「鏡」だったのです。

彼が日本文化について語るとき、いつも繰り返される言葉があります。

それは「沈黙」と「対称性」。

日本庭園に流れる水の音、能の間(ま)に響く沈黙、

襖絵に漂う余白。そこには、彼の探し求めた「目に見えない秩序」が宿っていました。

代表的な著書としては、

『月の裏側(La Voie des Masques)』

『野生の思考(La Pensée sauvage)』が挙げられますが

、日本について特に深い考察を残したのは、

『悲しき熱帯(Tristes Tropiques)』の終盤と、晩年の講演録『日本人への眼差し』です。

『悲しき熱帯』では、旅の終わりに近づく中で、彼はこう書きます——
「文明とは、無言の秩序の中にこそ真の美を見出す力である。」
この一文は、まさに日本文化に彼が見出した精神そのものでしょう。

日本神話に潜む「対立の調和」、京都の町並みに漂う「非対称の美」、

能舞台に宿る「沈黙の詩学」──

レヴィ=ストロースは、日本を「構造主義の理想郷」とまで感じ取っていました。

けれど、彼はまた慎重でもありました。

「日本を西洋の論理で読み解くことは、花の香りを数字で測るようなものだ」

と語ったこともあります。

つまり、日本文化とは、理屈を超えた体験の場なのだ、と。

私は思います。レヴィ=ストロースが日本を愛したのは、

単なる異文化への憧れではなく、

「人間という存在がどこまで美しく、静かに生きられるか」を、

確かめたかったからではないでしょうか。

そしてその答えを、日本の四季、日本の芸能、日本の無言の微笑みの中に、彼は見つけたのでしょう。

私は月の裏側で質疑応答の作品を読みましたが、

視点もさることながら、語彙力が豊富で表現が凄いなと思いましたね。

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ルネ・シフェールと日本

:古典に宿る静かな魂を求めて

ルネ・シフェール(René Sieffert)。
フランスにおける日本古典文学研究の礎を築いた存在。
静かに、しかし情熱を込めて、

日本の言葉と精神をフランスへ伝えた稀有な学者です。

シフェールは、東京外国語大学でも教鞭を執り、

生涯を日本文化の探究に捧げました。
彼が心を奪われたのは、

日本の古典文学——特に『源氏物語』『平家物語』『徒然草』など、

日本人の繊細な心情を静かに、しかし深く描き出す世界でした。

代表作は、

フランス語で訳出された『源氏物語(Le Dit du Genji)』。
単なる翻訳ではありません。

そこには、文字の向こうに広がる季節の匂い、

光と影の揺らぎ、心の微細な動きを捉えようとする、

彼の祈るような努力が込められています。

シフェールはこう語っています。
「日本の古典には、沈黙の音がある。音なき音楽が、心に直接語りかける。」


この言葉に、私は驚きました。
それは、言葉を超えた何か——

日本人が長い時の中で育ててきた「心のかたち」そのものなのだと。

特に彼が愛した『徒然草』に漂う「無常観」。
生のはかなさを、淡い美しさの中に見つめる感性。
シフェールはそれを、

フランス語に訳すことの困難さを認めながらも、敢えて挑みました。
なぜなら、それこそが日本文化の最も深い真珠だと、

確信していたからです。

彼の目に映った日本人とは、

自然の中に自らを溶かし、季節の移ろいと共に生きる人々でした。
儚さを恐れず、むしろその中にこそ美を見出す民族。
それは、合理主義を極めた西洋とは全く違う、

もうひとつの人間のあり方を教えてくれたのです。

シフェールが翻訳した『源氏物語』は

今もフランスで読み継がれています。
彼が遺したもの、それは単なる文学作品ではありません。
「日本人とは何か」という、

目に見えない問いへの、静かで確かな答えだったのです。

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フィリップ・ポンスと日本

社会の裏側に潜む美を見つめて

フィリップ・ポンス(Philippe Pons)。
朝日新聞のパリ特派員として、

そして長年にわたる日本社会の観察者として、
「現代日本」を冷静に、

しかし深い共感をもって見つめ続けたフランス人ジャーナリストです。

彼が目を向けたのは、

華やかな文化の表層だけではありませんでした。
むしろ、バブル崩壊後の傷ついた都市、

孤独を抱える若者たち、地方に息づく小さな共同体。
その見えない部分にこそ、

日本の精神の「真の美」があると彼は感じていたのです。

代表作は、1996年に出版された大著

『日本:人間の国(”Le Japon: Un Pays d’Humains”)』。
この本は単なる社会レポートではありません。
政治、経済、宗教、都市と農村、老いと死——あらゆる側面から、

日本人の生き方をまるで手で触れるように描き出しています。

ポンスは、日本人が持つ「表の顔」と「裏の顔」の緊張関係を繰り返し指摘します。
礼儀正しさの奥に潜む孤独、

集団への同調圧力の中に芽生える反骨精神。
それらを、ただ批判するでもなく、

感傷に流すでもなく、静かに、愛おしむように観察する。
この距離感の取り方こそが、彼の最大の美徳でした。

特に印象的なのは、

ポンスが「日本人は敗北の中に美を見出す民族だ」と書いたくだりです。
勝利ではなく、敗北の中にこそ品格がある。
これは、源義経、忠臣蔵、

そして現代の縮小する地方都市にも脈々と流れる、

日本独自の美学だと彼は喝破しました。

また、彼はこうも述べています。
「日本社会は完璧ではない。

しかし、その不完全さを受け入れた時、

私たちは本当の意味でこの国を理解するだろう。」

私は思うのです。
ポンスが描いた日本とは、

「理想の国」でも「失望の対象」でもない。
矛盾を抱えたまま、それでも美しく生きようとする人間たちの、

かけがえのない営みだったのだ、と。

彼の目を通して見る日本は、

厳しくもあり、しかしどこか温かい。
それは、日本人自身もまだ気づいていない、

日本文化の未来への希望の姿かもしれません。

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アンドレ・マルローと日本

芸術の永遠と出会った場所

アンドレ・マルロー(André Malraux)。
フランスを代表する作家であり、

文化大臣も務めた知識人。
そのマルローが、日本に寄せたまなざしは、

まさに「芸術に生きる者の視線」そのものでした。

彼が日本と本格的に出会ったのは、1950年代。
戦後間もない日本を訪れたマルローは、

荒廃の中にも静かに息づく美に、驚嘆しました。
とりわけ、彼の魂を揺さぶったのは、日本の仏像たち。
飛鳥・奈良時代の古仏たちが持つ、超越的な静けさと崇高さ。
それは、西洋のどの宗教芸術にもない「沈黙の力」だったのです。

マルローの代表作に、

『美の冒険(Les Voix du Silence)』があります。
この書の中で彼は、世界中の芸術を旅する中、

日本美術についても深く言及しました。
彼にとって、

日本の芸術とは「無言のうちに、永遠を語るもの」だったのです。

マルローは語ります。
「日本の仏像は、祈るのではない。存在そのものが祈りである。」
この言葉を読んだとき、私は鳥肌が立ちました。


祈りとは、手を合わせることではない。
そこに、ただ「在る」こと、その静けさ自体が、

すでに神聖なのだと——マルローは教えてくれたのです。

また、彼は日本庭園にも深い感銘を受けました。
石と苔、砂と水。
最小限の素材で、無限の宇宙を表現するその精神に、

マルローは「人間の営みが自然と響き合う究極の形」を見たのです。

彼にとって、日本とは、「死」と「美」が対立するのではなく、
むしろ静かに交差し、共鳴する場所だったのでしょう。

マルローの視点を借りて改めて思います。
日本文化は、何も叫ばない。

ただ静かに、しかし確かに、生と死と美の全てを語っているのだと。

凄いですね!こういう視点は日本人では当たり前で

見過ごしやすい部分でもあると思います。

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エドモン・ド・ゴンクールと日本

ジャポニスムの夢に魅せられて

エドモン・ド・ゴンクール(Edmond de Goncourt)。
19世紀フランスの文壇を牽引し、

「ゴンクール賞」の創設者としても知られる彼ですが、
実は、日本文化の美にいち早く魅せられた、

ジャポニスムの先駆者でもありました。

ゴンクールが日本に興味を抱いたのは、

パリ万博をきっかけとする「日本ブーム」の中にあって、

単なる流行ではない、もっと深い衝撃を受けたからです。
彼にとって、江戸時代の浮世絵は、

西洋絵画にはない「自由」と「生きた線」の世界だったのです。

代表的な著作には、『歌川国芳(Outamaro, le peintre des maisons vertes)』があります。
彼は、喜多川歌麿、歌川国芳、葛飾北斎といった浮世絵師たちを、

まるで個人的な友人のように愛し、その芸術を熱く紹介しました。

ゴンクールはこう書きました。
「日本の絵は、説明しない。感じさせる。線と色の呼吸だけで、心を揺さぶる。」
彼は日本文化を、単なる「エキゾチックな異国趣味」

としてではなく、人間の表現の極北として、真剣に受け止めたのです。

特に彼が驚嘆したのは、日本人の「瞬間を切り取る力」。
浮世絵に描かれる一瞬の表情、

舞い上がる着物の裾、桜の花びらが散る刹那。
これらは、ゴンクールにとって、生命の躍動そのものだったのでしょう。

また彼は、日本人の美意識を

「軽やかな死生観」とも表現しました。
死すらも、重く悲壮に捉えるのではなく、

自然の循環の中に優雅に溶け込ませる。
それが、彼にとって驚きと憧れの対象だったのです。

19世紀末のフランス——

画家たちが色彩と形態の限界を模索する中で、
日本の線描美、余白の美、そして「間(ま)」の感覚は、

まるで新しい宇宙を開く鍵のように映りました。

私は思います。
ゴンクールが見た日本とは、

過去の国でも、単なる伝統でもなかった。
むしろ、「これからの芸術が目指すべき未来」だったのです。

彼の情熱によって、ジャポニスムの火はヨーロッパ中に灯り、

モネやゴッホ、ドガたちの創造をも触発しました。
その始まりに、

静かに、しかし確かに、エドモン・ド・ゴンクールの心があったのです。

いかがでしたか。

日本とフランスは文化的にも精神的にも

大きな違いがありますが、

それぞれの切り口は違いますが、共通項なようなものを

感じますね。

今、日本に来ているインバウンドも

きっと感じてくれているでしょう。

こんなに愛される日本文化。

日本人こそ、見直していきたいですね。

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石川博信

石川博信

2009年ジーレックスジャパン株式会社創業。 日本の文化や歴史好き。小学校時代は通信簿で「オール1」の落ちこぼれ。日本にある素晴らしいものごとを国内外に広めていきたい。 それが私たちの想いです。長い歴史と四季のある気候に育まれた日本文化は、国内では衰退しつつある一方で、海外では日本の食文化、武道、芸道からコミック・アニメまでその愛好者は増加しています。 国内においては、日本の持つ素晴らしいものごとを見直し、海外においては、様々な商品にある歴史、ストーリー、想いを伝えていく。 日本のものごとが国内外へ広がり、その中で日本の文化や精神性に触れる機会を多く創出し、日本の素晴らしさを知って頂く事が、日本そして人類にとってもより良い社会へ繋がると考えております。
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