「曖昧さ」こそが、日本の智慧

公開日: : 最終更新日:2026/04/28 未分類

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「山くじら」に宿る知恵
白黒つけない「曖昧さ」こそが、日本の智慧

あなたは「山くじら」の味を知っていますか?

ビジネスの最前線で、日々「正解」を求め、
「白か黒か」の決断を迫られている経営者の皆様。
少しだけ、江戸の昔に思いを馳せてみてください。

「山くじら」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

実はこれ、猪(イノシシ)の肉のことです。
なぜ、猪をわざわざ「クジラ」と呼び変える必要があったのか。

そこには、現代の私たちが効率化の波の中で
置き去りにしてしまった、日本人が世界に誇るべき
「高度な知恵」が隠されています。

今回は、この「曖昧さ」という名の美学について、
これからのリーダーに必要な「心の余白」という
視点でお話ししましょう。

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■「建前」という名の、美しき秩序の守り方

日本の歴史を紐解くと、天武天皇の時代から、
仏教の影響もあり、度々「肉食禁止令」が出されてきました。
特に江戸時代、徳川綱吉による「生類憐れみの令」の時代には、
表向き、獣肉を食べることは「タブー」とされていたのです。

しかし、人間というものは、理屈だけでは割り切れません。
寒い冬には滋養強壮のために肉を欲し、その美味を知る人々は、
完全にそれを手放すことはできませんでした。

そこで生まれたのが、「山くじら」という呼び名です。

当時、鯨(クジラ)は魚類として認識されていました。
「これは猪ではない、山にいるクジラ、つまり魚なのだ」
そう言い換えることで、幕府が定めた「肉食禁止」という秩序を
真っ向から否定することなく、自分たちの「本音」を通したのです。

これを単なる「言い逃れ」や「嘘」と切り捨てるのは簡単です。

しかし、私はここに、日本人の深い知恵を感じるのです。

ルールを破壊して対立を生むのではなく、
言葉を少しだけ「ずらす」ことで、角を立てずに現実を受け入れる。
この「逃げ道」を作っておく感覚こそが、
長く平和が続いた江戸社会を支えた、高度なバランス感覚だったのです。

 

■「牡丹」「桜」「もみじ」に込められた色彩の美学

猪肉を「牡丹(ぼたん)」、馬肉を「桜」、鹿肉を「もみじ」。
江戸の人々は、獣肉を売る店を「ももんじ屋」と呼び、
これら色彩豊かな隠語を使って食文化を愉しんでいました。

幕末の江戸には、平河町の甲州屋をはじめ、
十数軒もの「ももんじ屋」が繁盛していたといいます。

これは単なる隠語ではありません。
直接的な表現を避け、季節の植物になぞらえることで、
食卓に「趣(おもむき)」という彩りを添える。

「肉を食う」という剥き出しの行為を、
「牡丹を愛でる」という風流な文化へと昇華させる。
ここには、事実をありのままに捉えるのではなく、
あえて「曖昧なフィルター」を通すことで、
日常を豊かにしようとする日本人の美意識が凝縮されています。

ビジネスにおいても、正論を突きつけるだけでは人は動きません。
厳しい現実を、いかにして「希望ある物語」に言い換えるか。
その「編集力」こそが、リーダーの器を決めるのではないでしょうか。

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■落語「二番煎じ」にみる、日本人の「和」の真髄

私が大好きな落語の演目に「二番煎じ」という話があります。

火の用心のために、町内の旦那衆が夜回りに出るのですが、
あまりの寒さに耐えかねて、番屋で隠れて酒を飲み始めます。
当然、勤務中の飲酒はご法度。
そこに、厳しい役人が見回りにやってくるのです。

旦那衆は大慌てで酒を隠し、「これは風邪薬です」と言い訳をします。
さて、役人はどうしたか。

彼はその嘘を百も承知の上で、こう言います。
「左様か、風邪薬か。では、拙者にもその薬を一杯くれ」
そして、温かい酒を旨そうに飲み、最後には、
「二番煎じの薬が欲しければ、また明日回ってこよう」と笑って去るのです。

これぞ、日本人の「粋(いき)」の極みです。

役人は法を曲げたわけではありません。
しかし、旦那衆の寒さと苦労を汲み取り、
「風邪薬」という曖昧な表現に乗っかることで、
誰も不幸にせず、その場を円満に収めたのです。

「白黒はっきりつける」ことが常に正しいとは限りません。
その間にある「グレーゾーン(余白)」に解を見出すことで、
組織の中に「和」が生まれ、持続可能な関係が築かれる。
これこそが、日本的な経営の真髄ではないかと思うのです。

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■「曖昧さ」は不完全ではなく、「安心感」である

現代社会は、デジタル化やグローバル化の影響もあり、
すべてを明文化し、契約で縛り、白黒つける傾向にあります。
確かに、それは効率的で分かりやすいかもしれません。

しかし、一分の隙もない正論は、時に人を追い詰めます。
「正しさ」を武器にして相手を裁くとき、
そこには「和」の入り込む余地はなくなってしまいます。

日本人の「曖昧さ」の前提にあるのは、
「誰も不幸にしない」という深い慈愛と安心感です。

曖昧であるからこそ、相手の立場を思いやることができる。
曖昧であるからこそ、異なる価値観を共存させることができる。
それは、不完全なのではなく、
極めて洗練された「衝突回避の設計思想」なのです。

「山くじら」という一言の中に、
相手を敬い、場を清め、調和を保とうとする、
日本人が数千年の時をかけて培ってきた美意識が息づいています。

 

■「余白」をデザインする

私は、仕事を通じて、
「言葉にならない想い」

を形にすることの大切さを学んできました。

お客様が本当に求めているものは、スペック(数字)ではありません。
その家で過ごす「曖昧で、温かい時間」そのものです。
私たちは、単なる建物を売っているのではなく、
「人生という物語の余白」を創っているのです。

皆様。あなたの組織に

「山くじら」を受け入れる余白はありますか?

部下の小さな失敗を、正論で叩き潰してはいませんか?
取引先との関係を、数字だけで切り捨ててはいませんか?

今こそ、私たち日本人のDNAに刻まれた
「美しい曖昧さ」を取り戻そうではありませんか。

正論を超えた先に、本当の信頼が生まれます。
言葉を超えた先に、魂の絆が結ばれます。

一見すると非効率に見える「余白」の中にこそ、
次なる時代のイノベーションと、
揺るぎない「和」の経営が隠されていると、私は確信しています。

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石川博信

石川博信

2009年ジーレックスジャパン株式会社創業。 日本の文化や歴史好き。小学校時代は通信簿で「オール1」の落ちこぼれ。日本にある素晴らしいものごとを国内外に広めていきたい。 それが私たちの想いです。長い歴史と四季のある気候に育まれた日本文化は、国内では衰退しつつある一方で、海外では日本の食文化、武道、芸道からコミック・アニメまでその愛好者は増加しています。 国内においては、日本の持つ素晴らしいものごとを見直し、海外においては、様々な商品にある歴史、ストーリー、想いを伝えていく。 日本のものごとが国内外へ広がり、その中で日本の文化や精神性に触れる機会を多く創出し、日本の素晴らしさを知って頂く事が、日本そして人類にとってもより良い社会へ繋がると考えております。
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