中村天風 人生の羅針盤

公開日: : 最終更新日:2025/12/16 未分類

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信念という羅針盤を持って生きる

中村天風の人生から学ぶこと

 

「信念、それは人生を動かす羅針盤のごとき尊いものである。

従って信念なき人生は、ちょうど長途の航海の出来ないボロ船のようなものである。」

 

この中村天風の言葉を読むたびに、

「自分はどんな羅針盤を手に生きているだろうか」と、

ふと立ち止まって考えさせられます。

 

目の前の仕事、家族との時間、将来の不安。現代を生きる私たちは、

毎日のように多くの選択を迫られています。

右に進むのか、左に進むのか。

それを決めるのが、「信念」という名の羅針盤なのだと思います。

 

■波乱万丈どころではない中村天風の人生

 

中村天風は、1876年に現在の東京都北区王子に生まれました。

旧藩士の家庭に育ち、修猷館中学で英語に磨きをかけ、

柔道部ではエースとして活躍。

しかし、その柔道の試合がきっかけとなった事件から、退学を余儀なくされます。

 

16歳で陸軍の軍事探偵となり、満州で危険な任務に就く。

日露戦争では銃殺刑寸前のところを部下に救われ、

113名いた軍事探偵のうち、生還したわずか9名の一人となりました。

命を落としていてもおかしくない場面を、何度もくぐり抜けてきたのです。

 

ところが、戦争が終わった後、今度は奔馬性結核という重い病に襲われます。

当時は不治の病とも言われた結核に、30代という若さで侵される。

そこで天風は、「身体の病だけでなく、心の持ち方にも原因があるのではないか」

と考え、米国へ渡り、自律神経の研究に打ち込みます。

 

それでも、彼が求める納得のいく答えは見つかりません。

イギリス、フランスと渡り歩き、各界の著名人と交流するものの、

「これだ」と腹の底から腑に落ちるものには出会えない。

肉体も心も、まさにさまよい続ける航海のような状態だったのでしょう。

 

■ヒマラヤの麓で見つけた「心の使い方」

 

転機は、エジプトのカイロで訪れます。

1911年、帰国の途上で、インドのヨーガの聖人カリアッパ師と出会い、

そのまま弟子入り。

ヒマラヤ第三の高峰カンチェンジュンガのふもとで、

2年半にもわたる厳しい修行に身を投じます。

 

そこで天風が徹底的に学んだのは、「心の使い方」でした。

 

・どんな状況でも、心をマイナスに傾けないこと

・恐れや不安に振り回されず、自分の内側に確固たる静けさを保つこと

・自分の人生を、他人や環境ではなく、自分の信念によって舵取りすること

 

この修行を通して、天風の結核は奇跡的な回復を遂げたと言われています。

ただ単に病気が治ったという話ではなく、

「心の持ち方一つで、人生そのものが変わる」という確信を得たのです。

 

■信念なき人生は、どこへ流されていくか分からない

 

天風はその後、実業界でも活躍し、銀行頭取などの要職に就きます。

しかし1919年、突然すべての社会的地位や財産を手放し、

人々に「心のあり方」を伝える道を選びます。

統一哲医学会を創設し、後の天風会へとつながっていきました。

 

その教えの根幹にあるのが、冒頭の「信念は人生を動かす羅針盤だ」という考え方です。

 

海に出る船が、羅針盤も地図も持たずに航海すれば、

いずれ嵐に飲み込まれ、漂流してしまいます。

人生も同じで、「何のために生きるのか」「自分はどこへ向かいたいのか」

という軸を持たずに日々を過ごしていると、

気づけば他人の価値観や世間の雰囲気に流されてしまう。

 

・周りが転職しているから、自分もなんとなく転職する

・みんながやっているから、とりあえず流行りのことを始めてみる

・本当にやりたいことよりも、「無難な方」を選び続ける

 

これでは、どこへ向かうのか分からないボロ船と変わりません。

 

■あなたの羅針盤は、どこを指しているか

 

では、信念という羅針盤は、どうやって持てばいいのでしょうか。

 

立派な理念を掲げる必要はありません。

格好いい言葉をひねり出す必要もないと思います。

大事なのは、「自分は何に心が動くのか」

「どんなときに魂が震えるのか」を、丁寧に思い出していくことです。

 

・どんなときに「やっていて良かった」と心から思えるか

・どんな人に「喜んでもらいたい」と感じるか

・どんな社会になったら、自分は嬉しいと感じるか

 

こうした問いに、少し時間をかけて向き合ってみる。出てきた答えを、

ノートの端に一行だけでも書いてみる。

「私は〇〇のために、自分の時間とエネルギーを使いたい」。

その一行こそが、あなたの羅針盤の針になっていきます。

 

■信念は、「決めた瞬間」から育っていく

 

信念というと、

最初から強固なものをイメージしてしまいがちですが、

最初は小さくて頼りないものです。少しの逆風で揺れてしまうし、

時に自分でもよく分からなくなることもあるでしょう。

 

それでも、「自分はこうありたい」と一度決めたなら、

そこから日々の行動によって、信念は少しずつ太く、強く育っていきます。

 

・迷ったときに、信念に照らして選びなおす

・目の前の誘惑に流されそうになったら、羅針盤を見返す

・うまくいかないときこそ、「自分の信念は何だったか」と問い直す

 

そうして繰り返し確認していくうちに、

「これだけは譲れない」という軸が、体の芯に一本、すっと通っていきます。

 

■荒波の時代だからこそ、羅針盤を磨く

 

今は、変化のスピードがとても速い時代です。

テクノロジーも、価値観も、仕事のあり方も、数年単位で大きく姿を変えます。

その中で、「正解」を外側に求め続けていると、いつも不安に揺さぶられてしまいます。

 

だからこそ、内側にしっかりとした羅針盤を持つことが、

これまで以上に大切になっているのではないでしょうか。

 

「信念、それは人生を動かす羅針盤のごとき尊いものである。」

 

中村天風は、自らの壮絶な体験を通して、この言葉を確信していきました。

命の危機、病、迷い。そのすべてをくぐり抜けた上でたどり着いた「心の使い方」です。

 

あなたの人生の船は、今どの海を航海しているでしょうか。

そして、その手にはどんな羅針盤が握られているでしょうか。

 

完璧な答えでなくて構いません。

今日、この瞬間に「自分はこう生きたい」と小さく決めること。

それが、長い航海の針路を決める、最初の一度の舵取りなのかもしれません。

 

■小さな一行から、人生の航路は変わる

 

もしよければ、今日の終わりに、

ノートでもスマホでも構いませんので、「自分の信念候補」を一行だけ書いてみてください。

 

・私は〇〇な人たちの役に立つ

・私は〇〇という価値を広げる

・私は〇〇な生き方を貫く

 

書いてみて、「なんだか違うな」と思えば、明日また書き直せばいい。

信念とは、最初から完成されたものではなく、

書いては消し、消しては書き直しながら、

自分の内側で育っていくものなのだと思います。

 

人生は創作です。どんな物語を書くのかを決めるのは、

ほかならぬ自分自身です。中村天風の言葉を、

あなた自身の人生の羅針盤を磨くヒントとして、

そっと胸にしまっていただけたら嬉しく思います。

 

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石川博信

石川博信

2009年ジーレックスジャパン株式会社創業。 日本の文化や歴史好き。小学校時代は通信簿で「オール1」の落ちこぼれ。日本にある素晴らしいものごとを国内外に広めていきたい。 それが私たちの想いです。長い歴史と四季のある気候に育まれた日本文化は、国内では衰退しつつある一方で、海外では日本の食文化、武道、芸道からコミック・アニメまでその愛好者は増加しています。 国内においては、日本の持つ素晴らしいものごとを見直し、海外においては、様々な商品にある歴史、ストーリー、想いを伝えていく。 日本のものごとが国内外へ広がり、その中で日本の文化や精神性に触れる機会を多く創出し、日本の素晴らしさを知って頂く事が、日本そして人類にとってもより良い社会へ繋がると考えております。
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