丸田芳郎 花王 中興の祖

公開日: : 最終更新日:2018/04/29 偉人伝 ものの見方

ph_01 丸田芳郎 花王中興の祖として知られる

大胆な経営手腕で花王を世界的企業まで押し上げた経営者で

日本人として珍しい位の合理主義的な手法は非常に参考になる点が多い。

とかく、結果重視でプロセスを重視しない日本的な経営が多い中で

売上げ目標なし、経営計画なし、業界シェア目標なし。

しかし、真理に沿ったことであれば、必ず叶うという信念を持っている。

役員が全員、科学用語を理解して、パソコンも自在に使えるという。

これは、意思決定のスピード化を速めるための手段だという。

花王はマーケティングカンパニーなのだ。

丸田の人間としての成長とともに独自の企業体質が出来てきたとも言える。

一社員時代から全社的な見地で小さいことにこだわらない

行動派の体質の丸田芳郎には学ぶと所も大きい。

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ほっとけ節

花王の社長に就任後にかねてから懸案であった総会屋対策に早速着手する。

まず、総会を仕切る総務部長を呼び出し総会屋の数をきいた。

すると総務部長は

「1万円渡しているのが50人、それ以上が17,8人、更に大物には料亭で

接待もしています」

すると丸田は

「今後そのような悪い習慣はやめる。一万円以下は少し時間をかけていくとして

それ以上の総会屋は全て切る。それで文句を言われたら新しい社長が総務部長を

首にするといっているといえ」

総務部長も

「しかしそういわれましても・・」

丸田は

「心配するな、俺が責任をとる」

こうして総会屋対策が始ったが、無言電話がかかってくるは、

直接丸田宛に、電話をかけてきて

「お前の女性関係をばらすぞ」とか

脅しを掛けてきた。

しかし、丸田は女性関係にとんと、縁がなく自分でも悩んでいるほどだった。

そこで、これは面白いな、と思い、一度話しにつきあおうと思った。

総会屋は、案の定「女性問題をばらすぞ」と脅しを掛けてきた。

しかし丸田は、

「女性の1人や2人囲うのは甲斐性というものだ。会社のカネを使っていれば

問題だろうが、自分の金をどう使おうが言われる筋合いはない。

総会で堂々と質問してくれればいい。しかし、あなたねよくよく調べないと

みっともないことになりますよ」

と言い放った。

それ以降も怪文書が広がったりしてきたが丸田は

「ほっとけ、ほっとけ」といい、取り合わなかった。

更に、香港資本からの花王株の買占め騒動が起きてきた。

心配する部下をよそに

「敵は、ウチが攻防戦にでて値を吊り上げようとしているんだ。

そんなのに付き合っていなくていい。ほっとけほっとけ」

そして香港の大株主には

「この度は有難う御座います。一層の業績向上に努めますので

今後とも宜しくお願いいたします」

たったこれだけをテレックスでうった。

相手は、全く動じない丸田に恐れをなしたのか、株を売却し始めた。

これらのエピソードはとても丸田らしい話で

周囲の声もいざ知らずゴーイングマイウェイなのだ。

これは、生き方にあり、信念でもあった。

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一社員でありながら全社を考える尖った社員時代

丸田は社員時代から少し変わった存在で現在の群馬大学を卒業して花王に入社

しかが、成績はよかったのものの、面接の態度が悪く面接官の心象がわるく

「追加採用」として採用された。

これには丸田も憤慨して

「こんな会社に入ってやるか!」と反発していたが、教授がなだめて

なんとか入社に至った。

最初は研究部に配属されて好きな研究に没頭した。

その仕事ぶりはすざましく、

朝7時には起きて、明け方4時頃までシゴトするというモーレツぶりだった。

そんな一方で無駄と思う付き合いは一切排除して、

当時の社長が左翼的思想をもっていて社員に義務つけられていた

勉強会にも一切参加せず、上司からもにらまれる存在になっていた。

上司の受けが悪い一方で研究の成果はドンドン上げていった。

丸田は、大豆、ヤシ、落花生、イワシなどの動植物性油脂を鉱物性油脂に

変える方法を発案した。ところがこの頃に第二次大戦が勃発し研究ばかりではなく

会社自体の進め方を考えていくようになる。

そんな中で会社のスローガンは

日本の肌を守って50年

というもので、丸田はこんな悠長なものじゃ駄目だ。

といい、自分が開発した動植物性油脂を鉱物性油脂に変える技術を応用して

航空機向けの潤滑油を作ろうと考えた。

ところが、会社ではこの案は聞き入れてもらえない。

そんな丸田の気持ちを察した当時の研究金仲間が日曜日になると丸田と共に

役員の自宅を回り

「石鹸ができなくなるのは目に見えています。是非やさせてください」

と訴え、これが出来なければ

「会社を辞めます」といった。

この要請に耳を傾けたのが後の社長になる伊藤英三であった。

伊藤は、他の役員を説得する役を引き受けてくれてようやく事業として

進むようになった。

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自分は未開拓分野を開拓する

軍に提供するようになってから花王の潤滑油技術を独り占めにするため、自分たちでも

潤滑油工場を動かそうとしたのだ。

素人には危険と花王側も一週間ほど試運転してからと主張するものの、軍には聞き入れてもらえず

軍命令をもって勝手に試運転を行った。

ところが扱いもよく知らない軍部では上手く操作もできるはずもなく

大爆発を起こし8名が即死するという大惨事を招いた。

丸田は、自分の研究成果の自信を深めていくと共に

未開拓分野への進出こそ自分のやるべきことだと思ったという。

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9784569834290

社内改革を始める

丸田は積極的に社内改革を行う。

まずは社内での無駄を徹底的に省くことに注力した。

会社にあった大きなフロアーをパーテーションで仕切り

役員の室を廃止した。

この良さは根回し、稟議などという手続きでなく

すぐ話ができる環境ができるというこだ。

丸田は日本式経営の良さは沢山あるが、

「大部屋方式」というのもその一つだ、としている。

また、タイムカードも廃止した。

あんなものにはんこついている暇があれば1分でも2分でも仲間と討議しろ。

というのがその理由である。

また、経費にしてもコンピュータを導入し、各自が打ち込むことで処理を進めた。

一々上長の許可を取らなくても良いようにしたのである。

当初、不正請求が増えるのではないか?という周りの心配をよそに

丸田は

「そんなのほっとけ。そういう奴はいづれ花王にいられなくなるから」

と実行を進めた。

そして経営者になった丸田は事業の哲学の必要性を痛感するようになり

色々悩み、考え、書を漁り、師に教えを乞い、座禅をして悟りを開こうとしていた。

そこで行き着いたのが釈迦の教えであった。

特に釈迦がリーダーとして無理に皆を引っ張っているのではなく

そして奇跡も起していない点であった。

誰もが平等に道を求め、修行ができるのである。

組織の中においても

「1人1人は自由で平等でなければならない。少なくても社内の情報は

平等にいきわたるようにしなくてはならない」

と考え実行していった。

平成に入りハーバードビジネススクールで

「花王の経営道」についてとして丸田は講演を行った。

経営には「和」が必要であり、

「上和(やわらぎ)下睦(むつび)、これこそが日本式マネージメント

リーダーシップの要諦であると話した」

西洋の合理性、日本的な和の思想。

これらをミックスした彼独特の経営手法は学ぶ点が多い。

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自分のやれることはわかっている

丸田の無駄を省く方法は、消費者へのきめ細やかな対応へと発展した。

昭和50年代には相談室に、商品特徴、歴史、性能、使用上の注意、誤飲などの処置の

方法を集めて整理して、相談があったときはすぐに対応できるようにした。

例えば、漂白剤は使った後、すすぐのが一般消費者のあいだでも常識だと花王は思っていた。

しかし消費者はそうでなかった。そこで商品にすぐ「すすぐ」の表記を入れた。

丸田は、自分のやれることはわかっています、花王の風土は基礎のない身の程知らず

のことはやりません、だから宇宙開発とか超電導とかはやらないんです」

その代わり、基礎技術があって応用ができるのもは積極的に取り組む姿勢w貫いている。

例えばフロッピーディスク。

これは応用物理の応用で既に基礎技術を持っていたので家庭用に応用できないか

考えてフロッピーディスクの形に落ち着き、電気屋さんで販売するのではなく

コンビ二やスーパーで買える様にし、このシェアは世界の15パーセントまでになった。

丸田という花王中興の祖の合理主義と日本的経営

そして今ないものを創っていく挑戦の風土。

凄い経営者ですね。

 

 

 

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石川博信

石川博信

2009年ジーレックスジャパン株式会社創業。 日本の文化や歴史好き。小学校時代は通信簿で「オール1」の落ちこぼれ。日本にある素晴らしいものごとを国内外に広めていきたい。 それが私たちの想いです。長い歴史と四季のある気候に育まれた日本文化は、国内では衰退しつつある一方で、海外では日本の食文化、武道、芸道からコミック・アニメまでその愛好者は増加しています。 国内においては、日本の持つ素晴らしいものごとを見直し、海外においては、様々な商品にある歴史、ストーリー、想いを伝えていく。 日本のものごとが国内外へ広がり、その中で日本の文化や精神性に触れる機会を多く創出し、日本の素晴らしさを知って頂く事が、日本そして人類にとってもより良い社会へ繋がると考えております。
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