岩戸開きとオモイカネの神に学ぶ「知恵」と「共創」の力
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最終更新日:2025/08/28
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古事記の中でも、
最も象徴的かつ謎めいた神話の一つ
――それが「天岩戸(あまのいわと)開き」の物語です。
太陽神アマテラスが天岩戸に隠れ、
世界が闇に包まれる。その閉ざされた世界を開いたのが、
芸能神アメノウズメの踊りと、八百万の神々の知恵、
そして中心的な役割を果たした知恵の神・オモイカネ。
この神話を単なる昔話として読むのは、
あまりにも惜しい。現代社会や組織、
個人の在り方に多くのヒントが詰まっていると、私は思うのです。
アマテラスの「引きこもり」は、現代人そのもの?
まず注目したいのは、
太陽神アマテラスが洞窟に隠れてしまうという、衝撃的な展開です。
神話の中で「光」を司る存在が、
「闇」にこもる――これは一見すると矛盾しているようにも見えます。
しかし、ここにこそ深いメッセージがある。
なぜなら、アマテラスの姿は、
現代の私たち自身の姿とも重なるからです。
人は時として、ストレスや不信、
恐れから「閉じこもり」たくなる生き物です。
家庭でも、職場でも、社会でも。心を閉ざし、
外の世界との関係を断ってしまいたくなる。
この神話は、そうした「心の岩戸」に対して、
どう向き合うべきかという、古代からの問いかけなのかもしれません。
オモイカネの神――“知恵を束ねる力”
では、その「閉ざされた世界」をどう開くのか。
ここで登場するのが、「思兼神(オモイカネノカミ)」です。
神々の中でも特に知恵に優れた存在として描かれています。
面白いのは、彼が「一人で何かをやる神」ではなく、
「八百万の神々の知恵を束ね、最適な方法を導き出す神」
として登場すること。
つまり、オモイカネの真価は「天才的な発想」ではなく、
「ファシリテーターとしての知性」にあるのです。
実際、岩戸を開く作戦は、アメノウズメの踊り、
神々の笑い、鏡の設置、布石の配置など、
複数のアイデアを組み合わせた“チームの叡智”の結晶。
この構造を、現代の組織論で読み解くならば、
「閉塞したチーム状況を打破するには、個人の力ではなく、集合知をいかにデザインするか」
にかかっている――そう言えるのではないでしょうか。
「笑い」と「踊り」が世界を救う?
岩戸開きのクライマックスで、アメノウズメが舞い踊り、
神々が大笑いする場面があります。
この「笑い」と「芸能」が、アマテラスの関心を引き、
最終的に外の世界へと導く契機となります。
これが何を意味するか――
私は、「理屈ではなく、感情に響くものが人の心を動かす」という、
普遍の真理だと感じています。
どれだけ正論をぶつけても、人の心は開かれない。
しかし、「笑い」や「喜び」や「驚き」といった感情体験は、
心の奥深くに直接作用する。
オモイカネは、おそらくそれを知っていたのです。
だからこそ、「最も理知的な神」が、「最も非論理的な方法=踊りと笑い」を選んだ。
これは、頭で考えすぎる私たちへの
「知恵と感性のバランス」の示唆なのではないでしょうか。
岩戸開きとは、「自分の内なる世界の開示」
この神話を個人のレベルに引きつけてみましょう。
誰しも、人生で一度は「岩戸」に入ってしまう瞬間があります。
自信を失ったとき、人間関係で傷ついたとき、目標が見えなくなったとき…。
その時、私たちの中に必要なのは、
「オモイカネ的知恵」と「アメノウズメ的表現」です。
つまり、
・現状を冷静に分析し、最適な突破口を考える“思考力”
・理屈を超えて感情に働きかける“行動力”や“創造力”
この両輪がなければ、「自分の岩戸」を開くことはできない。
実際、現代の心理療法やコーチングにも、
この構造はよく似ています。
言葉だけでは限界があり、アートや身体表現、
音楽、ユーモアが、心の扉を開く鍵となることが多いのです。
「知恵」は単なる知識ではない
オモイカネは、単に博識な神ではありません。
彼の知恵とは、「人の心を読み、状況を俯瞰し、
多様な意見を調和させ、最適解を導く力」。
これはまさに、現代のリーダーに求められる力そのものです。
単独プレーでは限界がある。
だからこそ、チームの中で「場を整え、全体を見通し、最も効果的な打ち手を選ぶ」
ことのできる人が、どんな時代にも不可欠なのです。
私はオモイカネを、
古代神話における「コンセンサス・ビルダー(合意形成の達人)」だと感じます。
現代社会の「岩戸」はどこにあるか?
では今、社会全体を覆っている「岩戸」は何か。
それは、分断、不信、情報過多、孤立…。
まさに、光を遮るような問題が山積しています。
その中で、私たちは何をすべきなのか?
やはり、個人として「自分の岩戸」を開くだけでなく、
社会全体の「岩戸開き」に関わっていくことが求められているのだと思います。
一人ひとりが、小さな知恵と行動で、
周囲に光を届けていく。それが連鎖していけば、世界はきっと変わる。
オモイカネのように、決して表には出なくても、
場を整え、他者の力を引き出す存在が、
今もっとも必要とされていると、私は確信しています。
まとめ 〜 オモイカネの知恵を、今に生かす 〜
天岩戸神話は、神々の物語であると同時に、私たち自身の物語でもあります。
・心が閉ざされたとき、どうすれば光を取り戻せるのか
・リーダーは、いかにして人々の知恵を引き出すか
・理性と感性、思考と表現をどう融合させるか
こうした問いに、古代の神々はユニークな形で答えを示してくれました。
私たちもまた、
自分の中に眠る「オモイカネ性」「アメノウズメ性」を呼び覚まし、
小さな岩戸開きを積み重ねていくことで、
閉塞の時代を打ち破っていけるのではないでしょうか。
そしていつの日か、「世界を照らすアマテラスの光」を、
もう一度引き出せるような社会を
みんなの知恵と創造で、つくっていけたらと願っています。

石川博信

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